明治中期 若狭扇面蒔絵八寸重

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扇面蒔絵が施された八寸の五段重です。明治中後期の製作と思われます。地の模様は卵殻を配した「夜の海」と言われるもので、それが出来上がった後に蒔絵を加えています。若狭塗の重箱が出来た後、依頼主がどこかに蒔絵の注文をしたか、若狭の塗師屋が変り塗が出来上がった後に別の工房に蒔絵を頼んで絵付けをして完成させたのかは分かりません。ただ共箱に「若狭塗八寸重箱」とだけ書かれているので、当初の完成品は蒔絵なしのお重であった可能性が高いのではないかと思っています。これだけの蒔絵(かなり上手い人の手によるものです)が当初から描かれていれば、箱書に「扇面蒔絵重」と書くはずだからです。
せっかくの変り塗が蒔絵で印象が薄れてしまうので、個人的には蒔絵の無い「変り塗だけの若狭塗」の方が私は好きです。

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