- SYD MEAD Museum
- 5F illustration 最終稿
- jungle walker (1975)
jungle walker (1975)
シナリオ: 放射能に汚染された事故現場、クラッシュサイトに到着した探査チームは防御スーツに身を包み、キャタピラでジャングルを移動する蛇のフォルムをしたトレーラーでやって来た。
画像2枚目:
MEADサインのアップ。珍しく75年の西暦表記。学生時代の課題以外に2点しかない。
画像3枚目:
最初に発表された画集「SENTINEL」(1979)に掲載されはしたが実は作品が手元になかったせいなのか先頭車両が見切れている。
画像4枚目:
続く三冊目の画集「SENTINEL Ⅱ」(1985)でも上下が見切れており、スライドフィルムをブローアップしたせいかピンも甘い。
サインの位置に75と西暦が描かれているのも非常に珍しく、私が知る限り学生時代の課題以外では生涯2点しかない。しかもその2点とも個人としての作品であるがゆえか。当時シドミードは42歳。フォード退社後、暫く色んな会社に籍は置いたが、'70年に個人スタジオを設立して未だ5年目。業界内では既に知られていたが映画「スタートレック」への参加や初の画集「SENTINEL」をリリースする4年も前。最も意気揚々で来る仕事は全部受けるほどエネルギー有り余る年齢だった。この作品に限り他のどの作品に比べても緻密で繊細さが際立つ異様なオーラを放つ。トレースした鉛筆の跡があったり、フラッシュバックのように敢えて影を塗りきらず、ホワイトでマスキングした筆の跡や、蔦に潜む地球上にはあり得ない昆虫が生々しい。勿論、軽いタッチで描いているにも関わらず離れてみるときちんとした遠近感を放つ。ウィンザー&ニュートンで描かれた水彩画のトーンも絶妙の陰影で、かなりの特色印刷で無い限り表現しきれない神業。また、パステルや色鉛筆を用いて広範囲に陰影を描いた技法は他の作品には例がない。蛇の耳に相当する部分に乗り込み口があり、クレーン状のリングがタラップになっているギミックが素晴らしい。蔦は円弧を幾つも反復しながら自ずと車両の半円に視点を集中する構図となっており、その中心に人物が配置された。水面に浮かぶ瓦礫の書き込みは驚異的なディテールを持ち、トレースまでの下絵では躍動感があった先頭車両は、この最終稿では水平に保たれ、クラッシュとの対比として静寂の中で調査が行われており、車両の先端が画面のキワまで迫っていることで緊張感が際立つ。
コレクションの中でもこの原画がやはり目玉であろう。シドミード展でも自然と来場者のこの作品の滞留時間が長かったように思う。入手してから暫くシドミード先生には何故か話せなかった。最初のオーナーが個人的に依頼し長年所有していたものの、その人の為だけに描かれた作品であり、理由がなんにせよ、そのオーナーの手を離れていることに申し訳なさを感じていたからである。何度かスタジオにお邪魔した際、「所有してるんだろ?」と体でバンプされ、ついにバレてしまい、どんな反応をされるのかオドオドしていたら真っ先に言われた言葉が、「全て揃っているか?」。だった。①一番最初に鉛筆で描かれたアイデアスケッチ、②ややサイズアップした陰影と構図を決めたマーカースケッチ。③さらにサイズアップしたトレース画。④そしてこの最終稿、全てが揃っていることに安心されていた。「それは価値があるよ。全て揃ってるのはそれだけ。どうせお前は売らないし、よく理解してるだろうから大事にキープしておきなさい。」と。
①②のスケッチの年代が1968年、③④が1975年にはレアなエピソードがある。もともとはU.S.STEEL社のカタログ用に描いていたのが「クルマではない」というエージェンシーの理由でボツとなってしまった。たまたまある友人がスタジオに来た際、②を見て個人的にフィニッシュして欲しいと依頼したのが最初に描いてから7年後というブランク。生涯2600以上とも言われるプロジェクトの中で唯一、個人からの依頼で描き上げた一式を進呈されていたそのままフルセットで私の手元にやって来たのだ。実はこの4点の他に見たことないアイデアの痕跡がオプションとして同封されていた。コレはまた別の機会に。
シドミード展図録集をお持ちのファンは既にご存知だと思う。画集「SENTINEL」79ページや「SENTINEL Ⅱ」109ページをお持ちのファンも是非この作品で試して欲しい。オフィシャルのアプリをかざすと面白いARが出現する。改発担当が言うには葉書サイズがあれば楽しめる。
Apple
https://apps.apple.com/jp/app/oblagon-ar/id1313946787
Google play
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.SydMead.OBLAGON&hl=ja
(補足)
I am so happy that the JUNGLE CRAWLER illustration which I painted back in the sixties is now yours. You are the one person who would deserve to own it. This illustration is the only private commission I have ever done!...AND YOU NOW HAVE IT!! Very wonderful.
(from SYD MEAD : 2010 April 27th)