クロムスフェーン(ロシア産)0.747ct

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スフェーン(チタナイト)はファイアと呼ばれる色とりどりの鮮やかな輝きが特徴的な宝石です。その名の通り、成分中にチタン(Ti)を含む鉱物で裸石のコレクターはもちろん、原石コレクターからも人気が強い石です。

産地はマダガスカルやパキスタン、ブラジル等もよく見かける印象で、裸石の多くは、スフェーンの長所を最大限に活かすため、ブリリアントカットが施されます。

Twitterに投稿した内容ですが、反響のあったものの誤解が広がっている気がしますので、こちらに改めて纏めさせていただきます。

一般に"クロムスフェーン"と呼ばれるスフェーンですが、よく紹介される内容として、"緑色を帯びた、ファイアが煌めくスフェーンで、チェルシーカラーフィルターで赤くなるもの"ということですが、多くのショップでは「"クロムスフェーン"として仕入れているので深く考えずにそう書いている」とのことらしいです。

本来、クロムに起因する発色のスフェーンの外観は、ロシア産の高品質のデマントイドガーネットに近く、ファイアはほとんど見えません。そして、少しでも黄色ないし褐色が混じっているものは"クロムスフェーン''ではありません。何故なら、そのクロムスフェーンではないスフェーンの緑色の発色要因は、成分中に含まれるチタンと鉄のバランス、または鉄の価数によるものです。

日独宝石研究所の分析結果によれば、本来のクロムスフェーンのクロム含有率は一般的に販売されているそれの100倍以上です。

また、チェルシーカラーフィルター(CCF)を通して赤になったとしても、それがクロムスフェーンである証左にはなりません。CCFを通してスフェーンを見た場合、基本的に全て赤くなります。

CCFは、"エメラルドフィルター"といわれるようにエメラルド含むベリルの区別(エメラルドかどうか)はある程度できます。ベリルに関しては、石に含まれる鉄の量で赤色の光の吸収量が変わります。エメラルドの場合は発色がクロムまたはバナジウム起因であり鉄起因ではないため、暖色系ライトの赤色が透過し、フィルター越しに赤色に見えます。鉄起因のブルースピネルが何も反応がなく、コバルトスピネルが赤くなる原理と全く同じです。スポジュメン(ヒデナイトとグリーンスポジュメン)も同じです。

しかし、アンドラダイトガーネットやスフェーンについては、鉄の吸収が先に挙げたベリル等とは異なり、赤色の光を透過するため、鉄が含まれていようが基本的に赤くなります。というより、クロムが含まれていようがいまいが関係ありません。「チェルシーカラーフィルター(CCF)を使って赤くなった、この現象はクロムが含有されているためである。」という説は誤りです。

クロムスフェーンであることを確かめるためには、LA-ICP-MSやラマン分光法を用いた専門機関による分析が必須です。

クロムスフェーンの産地の特徴のひとつとして、周りにクロムが物凄く豊富な地域、それこそ、レアガーネットのウバロバイトガーネットが産するような場所でなければ採取することができません。世界的に良質なウバロバイトガーネットが産する地域は、ロシアの西ウラル、サラノフスキー鉱山が有名ですが、クロムスフェーンにしても、ここか、メキシコ北部の極一部地域ぐらいしか採れません。

現状、一般的にクロムスフェーンとして販売されている、パキスタン産を代表とするスフェーンがクロムスフェーンとして出回るようになったのは、タイの研究機関が、ファイアが煌めく緑色に褐色が混じったスフェーンを誤ってクロムスフェーンとして紹介してしまったことがきっかけです。そのきっかけとなった発表の具体的な内容までは追えませんでしたが、権威ある研究機関の誤った発表が世界中に広がったことが今日の誤解に繋がっており、今なおその誤解は晴れず、本来のクロムスフェーンが埋もれてしまっているままとなっています。

何を持って「クロム」スフェーンなのか考えたとき、その名で販売できるスフェーンは限りなく少なくなるのではないでしょうか。

このクロムスフェーンについて、2019年初めの日独宝石研究所の会報誌に詳しく紹介されていました。分析結果まで掲載されています。業者さまで、もしこの記事を読んで頂き詳しく確かめたい、ということであれば問い合わせしてください。

さて、投稿の石ですが、クロムスフェーンです。普通のスフェーンと見た目が異なりファイアは非常に見えづらいものになっています。画像ではわかりづらいですがスフェーンらしく輝きは凄まじいです。産地はロシア、サラノフスキー鉱山。

鉱物名:チタナイト
宝石名:スフェーン(Cr起因"クロムスフェーン")
組成: CaTiSiO5
重量:0.747ct
産地: Saranovskii Mine ("Rudnaya" underground chromite mine; Glavnoe Saranovskoe deposit), Saranovskaya Village (Sarany), Gornozavodskii District, Perm Krai, Russia
鑑別:日独宝石研究所

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  • グリーンが濃い!
    初見でデマントイドかと思ってしまいました😮

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      shm

      2020/06/13

      ありがとうございます😊これデマントイドだったらまず手が出ないですよね💧

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