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- ルービンシュタインのベートーベンピアノ協奏曲第5番皇帝
ルービンシュタインのベートーベンピアノ協奏曲第5番皇帝
徹頭徹尾、ルービンシュタインによる、ルービンシュタインのための演奏と言えます。冒頭のオケのトゥッティが堂々と鳴り響いた後、何とちょっと間をおいてからルービンシュタインのカデンツァが始まります。歌舞伎で大見得を切る主役のようで、本当に「待ってました、千両役者」という掛け声をしたくなる、実に派手な登場です。前述の美人ピアニストは、このカデンツァを楽譜に書かれている音型をきちんと表すように弾いているのですが、ルービンシュタインは大きな塊として豪快に、華麗に淀みなく弾いています。ヴィルトゥオーソという形容がこれほどふさわしい演奏もありません。ラインスドルフは当時、ミュンシュの後任としてボストン交響楽団の常任指揮者になっていました。引き締まったテンポと響きで演奏していますが、ルービンシュタインのソロが始まるときは、わずかに手綱を緩めてピアノ・ソロが弾きたいテンポにギアチェンジしていきます。それが実に自然なので、流れが滞ることがありません。
ルービンシュタインのピアノはいつでも何処でも、華麗で輝きに満ちています。決して頭ごなしに睥睨するような威圧感はありませんし、格別主張が強い演奏でもありません。それでも聴き手に一縷の迷いも与えず、有無を言わせない迫力があります。ラインスドルフも伴奏に徹しているわけではなく、オケを目一杯鳴らして推進力のある演奏で対抗しているのですが、ルービンシュタインはさらにその上を駆け抜けています。