ミルシテインのブラームスヴァイオリン協奏曲ニ長調

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ここには若き日の技巧の安定や抜群の美音はそのままに、老境に入りしみじみとした味わいの加わった、一人の偉大なアーティストの夕映えのように美しい到達点が記録されています中でもEMIに2度録音があるブラームスのヴァイオリン協奏曲での解釈の深化は素晴らしく、彼自身も以前のレコードに較べて、「よりロマンティックな解釈になっている」とし、「人はその音楽の要求する方向に進歩する」と述べています。第1楽章の自作カデンツァが終わったあと、コーダでヴァイオリンがテーマを弱音で歌う部分など、当盤は同曲レコード中でも隔絶した美しさをもっています。
1972年録音のチャイコフスキー、1973年録音のメンデルスゾーンも、以前の録音に較べて肩の力が抜け、極めてしなやかで洗練された、驚くほどノーブルな演奏が展開されています。

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