壊れた扉から尾崎豊

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尾崎豊、10代三部作の完結編 (3rd. album)。
2008年5月23日に日本でレビュー済み
 10代の若さが溢れていた前2作と比べると、少し落ち着いて幅が出てきた感じもある3作目。しかし、「良い曲が多い」という意味では、恐らく最高傑作であろうと思われる。

 明るい疾走ソング 1.「路上のルール」は、自分の生き様に苦い笑みを浮かべながらも、音楽を追い求め、愛する人にすがる、尾崎の等身大の姿が描かれている。
 3.「Forget-me-not」(=勿忘草)では、「ビルの向こうの空を、いつまでも探してた」と歌う。灰色の都会で求め合う二人の、ぬぐい去れぬ孤独感が、切ない。

 そして、「裏の意味」では、ドラッグの影響が出始めてきた作品、でもある。4.「彼」がまさにそうで、「無口に並べた... drug」と歌っている。「ぼやけた太陽」「脆(もろ)い暮らし」など、荒れた生活感が伺える。歌い上げるコーラスも、どこか絶望的。
 7.「Driving All Night」では、「死に物狂いで」橋の上を疾走する車を歌う。自由を追い求め、時に暴走することもあった尾崎豊を(これも)よく表した曲。珍しくあまり高さが変わらないメロディーで、詞が先行している曲。

 他の曲が好きな人も勿論いるだろう。1曲たりとも、手を抜かなかった人だから。でも、ボクはこの4曲が突出して好きだ。

 溢れる才能を持ちながら、決して幸福感が感じられない尾崎。才能に恵まれたことが、必ずしも彼にとっては幸せではなかったのかもしれないが、これだけ密度の高い人生が送れるなら、これで良かったのではないか、と納得してしまう。

尾崎豊 (おざき ゆたか/OZAKI Yutaka)
壊れた扉から (Through The Broken Door)
1. 路上のルール (4:31)
  Rules On The Street
2. 失くした1/2 (3:50)
  Alternative
3. Forget-me-not (5:14)
4. 彼 (4:07)
  Grief
5. 米軍キャンプ (6:32)
  Base Camp
6. Freeze Moon (6:17)
7. Driving All Night (5:26)
8. ドーナツ・ショップ (5:41)
  Donuts Shop
9. 誰かのクラクション (6:20)
  Somebody Beeps A Klaxon

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