AIRMAIL SPECIAL / 久保田早紀

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1981年発表の4th.アルバム。 編曲は萩田光雄に加え、佐藤準も4曲担当。 CM曲にもなった「オレンジ・エアメール・スペシャル」の ♪full of sunshine L.O.V.E.♪ に思わずイスからズリ落ちそうになった。何なんだ、この明るさは… 前作で幻想世界を旅する”久保田早紀”と決別した彼女が選んだのは、東京に生きる等身大の女性”久保田小百合”だったという事か。 しかし明るめの曲が並ぶA面に対してB面では一転、都会での孤独感を綴ったやや暗めの曲が続く。陽と陰の対比を狙ったのかも知れないが、どうも違和感は拭いきれない。 この時期のライヴを観る機会があったが、まだ方向性は完全には定まっていなかった感じだった。 このアルバムは、そんな心の迷いがそのまま出てしまったように思える。

注目すべきは1st.アルバム同様に冒頭にある「プロローグ」という曲。勿論異なる曲だが、これは新しい久保田早紀の始まりを宣言したもので、ここで彼女は ♪鏡に映った横顔は あなたの知らないもう一人の私 さよならを上手に言いたい♪ と歌った。 前作の「ビギニング」で示唆された新しい方向性の回答が、ここで明らかになった訳である。

ところで先に紹介した「天界」ジャケにサインを貰ったのは、このアルバム発表直後に行われた新宿ルイードでのライヴ後でだったが、この時は「異邦人」をなかなか演ろうとしなかった。 このアルバムからの曲が主に演奏されてた記憶があるが、アンコールが終わっても異邦人は演らず。客は皆が納得できずいつまでもアンコールを求めていたので、久保田早紀本人が出てきて「すみません、もう曲が無いんです。」と告げると、ファンの一人が「異邦人しかないでしょう!」と叫び会場は拍手の嵐。すると久保田はバンドメンバーと暫く打ち合わせをして、ついに演奏してくれた。打ち合わせも結構長い時間していたので、本当にセットリストには入っていなかったようだ。やはりこの曲に対しては当時はかなり複雑な感情を持っていたのではないだろうか。 いつまでも「異邦人」のイメージを求めるファンに対して、本人は早くそこから脱却したい。そんなギャップが彼女の心の底で葛藤となっていたのは間違いない。 そんな気持ちの揺れのようなものが、このアルバムからは感じられるようだ。 因みに、実際の久保田早紀は思っていたよりも随分小っちゃくて可愛らしかった🥰

オレンジ・エアメール・スペシャル
https://youtu.be/USq-rN47X6w?si=CezweE59hhq7orN8

#アナログレコード

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