「バベルの塔」展

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2017年、大阪国立国際美術館。
ブリューゲルを産んだ北フランドル地方の絵画の歴史が紹介されており、冒頭では珍しく木彫も展示されていた。数ヶ月前に観た「ベルギー奇想の系譜展」とも重なる内容だが、今回はオランダのボイマンス美術館所蔵の15、16世紀の初期ネーデルランド美術がメインとなっている。現在のベルギーとオランダは当時ネーデルランドと呼ばれていたが、統一された国家といえる状態では無く、それぞれの自治権を持つ地域の集合体だった。ハプスブルク家が中央集権的な統治を始めると政治的だけで無く、宗教的にも混乱をきたすようになるが、その一方で芸術的には油絵の新たな技法が開発されるなど大変な進歩を遂げたようだ。
今回はヒエロニムス・ボスの2作が初来日したのも目玉の1つで、ブリューゲルの版画も多くて先日の復習もできたよう。そして「バベルの塔」だが、想像以上に小さい絵で驚いた。しかし、その一部を強拡大した物も展示されていたが、ちゃんと人間がその動きまで分かるように細かく描きこまれている。今迄は気にもしていなかったが、下層と上層とで窓の様式が異なる事で、建造がいかに長期にわたっているかを表現しているとか、細かな部分を読み込むとこの作品の凄みが理解できる。人間が天まで届くような建造物を建て始めたことに怒った神が、言葉をバラバラにして意思疎通が出来ないようにして、建造中止に追い込んだといい、これが多言語の始まりだと言われている。

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