角川書店 角川文庫 青い外套を着た女

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昭和五十三年十一月二十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和12年(1937年)に雑誌「サンデー毎日」に掲載された横溝正史の短編小説「青い外套を着た女」。
フランスから帰朝したばかりの貧乏画家・土岐洋三は、さわやかな宵の銀座を歩いているうちにポケットに奇妙な紙切れが入っていることに気づく。その紙切れに「日比谷公園の入り口で、青い外套を着た女に会いたまえ。今宵の幸運が君を待つ」と書かれているのを見た彼が興味本位で日比谷公園に行くと、果たしてそこには真青に光るレインコートを着た美しい女が立っていた。誰かに追われている様子の女の正体は一体...?
一枚の紙きれがきっかけで出会った若い男女の奇妙な逃避行を描いた、横溝正史戦前の作品ですね。横溝正史といえば探偵小説の他にも様々なジャンルの小説を手掛けていますが、本作はその中でも珍しいラブロマンスを主軸にした作品といえそうです。とはいえ、そこは横溝正史、最後に明かされる“青い外套を着た女”の意味など、探偵小説で培ったストーリーテリングの巧みさは本作でも遺憾なく発揮されていて、最後まで読者を惹きつけてやみません。本書には表題作の他に「白い恋人」「クリスマスの酒場」「木乃伊の花嫁」「花嫁富籤」「仮面舞踏会」「佝僂の樹」「飾窓の中の姫君」「覗機械倫敦綺譚」の短編8編が併録されています。いずれも昭和10年(1935年)~昭和13年(1938年)に執筆された作品ですが、個人的にはある意味あの「女王蜂」の原型ともいえそうな“由利先生もの”の「木乃伊の花嫁」が興味深かったです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 青い外套を着た女」です。文字通り、青い外套を着た美しい女。まさに貧乏画家の土岐洋三が日比谷公園で出会った正体不明の女、美樹を描いた表紙画ですね。切り傷から血が滴っているかのような感じで赤や黄色を配しているところが何とも不穏な画柄ですが、「青い外套を着た女」を読んだ後に改めてこの表紙画を見ると、杉本氏の“遊び心”にニヤリとしてしまいます。
裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。

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