角川書店 角川文庫 殺人暦

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昭和五十三年十一月二十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和5年(1930年)から昭和6年(1931年)にかけて雑誌「講談雑誌」に連載された横溝正史の中編小説「殺人暦」。
大新聞に掲載された5人の著名な男女の死亡広告。ところが5人はまだ存命しており、死亡広告は質の悪い悪戯かと思われたが、実は5人には決して他人にはいえない秘密があって、各々恐れ戦いていた。5人は腕利きの探偵・結城三郎に調査を依頼するが、そこに怪盗・隼白鉄光も関わってきて、事件は複雑な様相を呈してくる。そんな折、ついに5人の中の一人、舞台女優の紫安欣子が舞台上で殺された...
5人の著名な男女の死亡広告に端を発する奇怪な事件を描いた、横溝正史戦前の作品ですね。5人の男女には15年前の、ある忌まわしい出来事に関する秘密があり、それが故に命を狙われるのですが、そこに謎の怪盗・隼白鉄光が参入してきて、事件は殺人鬼や探偵、怪盗が入り乱れての展開を見せます。正直、いろいろと盛り込み過ぎて空回りしている感は否めませんが、大正期に活躍した探偵作家・三津木春影がモーリス・ルブランの「奇巌城」を翻案した「大宝窟王」でのアルセーヌ・ルパンの和名“隼白鉄光”という名前をそのまま使っていることからも窺えるように、横溝正史版ルパンという感じの作風は今となってはなかなか興味深いところです。本書には表題作の他に「恐怖の部屋」「女王蜂」「死の部屋」「三通の手紙」「九時の女」の短編5編が併録されています。いずれも昭和6年(1931年)~昭和8年(1933年)に執筆された作品ですが、個人的には映画撮影所を舞台に、傴僂男や中世の拷問具“鉄の処女”を配した一種異様な設定が魅力的な「恐怖の部屋」が良かったです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 殺人暦」です。5人の標的を5の付く日に殺すという悪魔の“殺人暦”と、第1の殺人の暗喩であるピンが刺さった蝶、そして、無表情な女の顔。真っ赤な血文字とモノトーンの女の顔とのコントラストが鮮烈な印象を残します。

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