コラム-7 「ハワイ・ファイヴ・オー」のレコーディング

初版 2023/09/19 05:36

リード・ギターは誰?

ボブ・ボーグル説

 これは、日本でレコードが発売された頃から言われていた説なのだが、きちんとしたエビデンスはないようだ。そもそもボブ自身もそういうことを主張していない。思うに、レコードの演奏を聞いたファンが「あれっ?」と違和感を感じたわけで、「ノーキー・エドワーズにもジェリー・マギーにも聞こえない……」ということ。リード・ギターのピッキングは浅めで、まるで軽く「チョイ弾き」しているような感じ。ピッキングのタイミングも、どちらかと言うと遅れ気味でたどたどしい印象も受ける。そこで、これはベンチャーズにもう一人いた初期のリード・ギタリスト、ボブのプレイじゃないのか?と考えた人がいたのかもしれない。(ボブにはいささか失礼な話だけれども)

トミー・テデスコ説

 トミー・テデスコは著名なセッション・ギタリストで、日本でも「トム・テデスコ」名義のレコードが発売されていた。その彼が、自身の伝記にそう記しているのである。セッションのことを語ってはいないが、自身のプレイしたレコードの中に「ベンチャーズのハワイ・ファイヴ・オー」が含まれている。

ノーキー・エドワーズ説

  Del Haltermanの記した「Walk-Don't run The Story of THE VENTURES」では、多くが「語られている」。
要約すると『ノーキー・エドワーズがリハーサルしていたものは、楽曲の一部のみで、彼はそれがリピートされると考えていた。が、実際はそうではなく、転調されるなどもっと複雑な構成であった。譜面の読めないノーキーのために、トミー・テデスコが読譜して手本を示し、それをノーキーがその場で習得してプレイした。』というもの。更にこう続く。『ノーキーは一度で習得してしまったため、トミー・テデスコはやることがなくなり、後はコーヒーを飲んで過ごした。』

 加えて、APPENDIXでは、「ハワイ・ファイヴ・オー」の「スウィートニング・セッション」でトミー・テデスコがプレイしたことが書かれている。「スウィートニング」の詳細は不明。

 又、以前アメリカにあったベンチャーズのウェブ・サイトで、ボグ・ボーグルはこんな説明をしていた。『彼(ノーキーのこと)は譜面が読めなかったため、代理のギタリストがその時のセッションではプレイした。後日、彼(ノーキー)の演奏で差し替えた。』

ベースは誰?

 著名なセッション・プレイヤーのキャロル・ケイが、自身のサイトでベンチャーズの「ハワイ・ファイヴ・オー」のセッションに参加したと述べているのを読んだことがある。キャロル・ケイと言えばビーチ・ボーイズの多くのレコードでベースを弾いていたことが有名で、後年はブライアン・ウィルソンと一緒の映像記録も残されている。「ヘルプ・ミー・ロンダ」のベース・フレーズに関し、キャロルは「自分ならこう弾くのだけど、ブライアンはこう弾いてくれと言うのよ」と言って「ドッ・ミッラ・ソッミ・レッミ」を弾いてみせるなど、実にあっけらかんとしたもので、お互いに「秘密の影武者」などという感じではなかった。

考察

 真実は判らないけれども、私自身は「リード・ギターはトミー・テデスコ」,ベースは「キャロル・ケイ」だったのだろうと推測している。トミー・テデスコやキャロル・ケイといったクラスのプレーヤーは、ベンチャーズのレコーディングに参加しようがしまいが彼等自身の評価に影響ないし、そういったことで嘘はつかないだろうと考える。一方、バンドの構成員からすれば、自分たちが本来担当している楽器について外部のセッション・ミュージシャンが加わっている、というのは決して名誉になる話ではないのだろう。こちら側には「話を取り繕う」動機が存在している。

 なお、ベンチャーズの初期のレコードについては、少なからず外部のミュージシャンが参加しており、トミー・テデスコも初めてのことではない。個人的には、前述のブライアン・ウィルソンとキャロル・ケイの関係のように、オープンにしてもいいのではないかと思うのだが、ベンチャーズの場合は、そうはならなかったようだ。
 ベンチャーズはもともとカメレオン・バンドで、根っこはボブとドンの2人を中心とした会社組織のようなもの。看板のリード・ギタリストと言えども、組織としては営業部長クラス、当然替えが効く。膨大なレコードのひとつひとつがどのようなメンバーで作られたにせよ、「それがその時のベンチャーズ」と考えている。

 なお、タイトル曲以外のアルバムとしての「ニュー・デラックス(ハワイ・ファイヴ・オー)」の演奏だが、リード・ギターは私にはジェリー・マギーに聞こえる。(断言はしないが、トミー・テデスコの演奏とは随分違っている)
一方ベースについては、何とも言えない。「ゴリッとした感じのフェンダー・トーンはキャルロ・ケイと言われれば、そうかなと思う。
 世の中には、レコードを聞いて「このドラマーは誰々だ」と断言するような方もおられるようだが、私自身は音だけ聞いてプレーイヤーを断言する能力が欠けている。

国内盤アナログ・レコード(1950年代〜1960年代〜1970年頃)のデータ・ベース(リスト)を作成しています。
(国内盤レコードDB)
ジャンルはオール・ジャンルで、フォーマットはExcel ファイル(xlsx)です。
現在仮開示しているのは、
日本グラモフォン
東芝
日蓄工業
日本ウエストミンスター
日本ディスク(1950年代)
日本マーキュリー(1950年代)
ユニバーサル・レコード(1950年代)
日本コロムビア
キング・レコード
です。

今後、随時追加していく予定ですが、時間はかかります。

ダウンロードして自由に使って頂いて結構ですが、同時に開示している説明ファイル(ワード文書 or リッチ・テキスト)を
よくお読みになってください。また、現段階ではあくまでも仮開示であり、完成形ではないことにもご留意ください。

https://1drv.ms/u/s!ApINowI3ybkacrP3M_GV7wSe6j0?e=67lDy2

Default