③初の「自採水晶」
2017年8月5日。記念すべき日となった。5月のGW明けから石好きがますます加熱、6月14日から、それまで購入していたブレスレットを自作するようになっていた。今考えると何とも下手である。パルコの石屋でもビーズを購入し、あれこれ作っていた。このオレンジ色の石は琥珀、通常の琥珀から虫入りだけを長時間、店員さんと共に探して3つ見つけたものだ。まだ現役。当然、ブレスレットと並行して、国産水晶の収集も考えていた。7月、スマホであれこれネット情報を探していると、見つけた。「増富で水晶を拾える」みずがき湖ビジターセンターに即電話し、どこで採れるか聞いた後、地図をもらえることとなった。その後、両親と折り合いをつけ、大学4年の夏休みは、山梨県北杜市増富に行くこととなった。増富温泉はラジウム温泉で、低温ながら放射線によるホルミシス効果により、ジワジワと暖かくなる温泉。真夏の保養にピッタリだった。8月4日から二泊三日の行程で、いざ増富へ。初日はみずがき湖ビジターセンターに赴き、地図を入手。ついでに拾われた水晶も見せてもらったが、大きいものは握り拳ほどのサイズ。「増富すげぇ」と驚いたが、今考えると上流の八幡山ズリから流された水晶なのだと思う。夕方に現地到着、宿「金泉閣」に荷物を置いた後、散策程度で見て回るも、石英は確かに見つかったが…という印象。遅いので、ゆっくり温泉に浸かって休むことにした。翌日が本番。場所は、増富温泉郷横を流れる本谷川。温泉街から上流に向かって川原を歩き、その中の岩から丸まった水晶を探す。付近は花崗岩だらけで、岩の隙間を見れば確かに水晶らしきものは見つかる。2時間ほどで温泉街付近から見切りを付け、少し進んだカーブミラー辺りから川原に降りていく。途中途中では、隙間にそれらしきものは見つかるが、同業者がほじくったり、頭が飛んでいるのでそのままスルー。柱面がはっきり分かるが頭はない。通称「水晶の釜」だが、ガマではない。せせらぎと言うには勢いの強い本谷川。付近には丸まった石英ならたくさんある。温泉街から離れただけあって、探訪者も少ないのか、あまり人が見た痕跡はない。3時間ほど探した辺り、父親が声を殺して「(あった、あったよ!!)」と見せてきた。興奮でブレる画像ここに落ちていたそうだ。完璧としか言いようのない、褐鉄鉱にめり込んだ水晶だった。その後、自らも必死になって水晶を探した。4時間経過し、もう宿に戻る予定を30分過ぎたあたり、流れが穏やかな川原に膝をつきながら探していると…あった。ファントム水晶。必死過ぎて、そして衝撃が大きく嬉しすぎたのか、採取時の写真がないのが悔しい。10分後、立て続けに小粒ファントムを発見する。4時間ちょいの成果はこちら。正直、八幡山の産なのか増富産なのかは不明。本谷川で採取したことは確実。サンプルの花崗岩含め小さいのが多め。父は大きい2つを手に入れていた。この日の夕食の美味しさといったら格別だった。鰻が出たのだが、川のせせらぎを聞きながら、ふわふわの蒲焼きを食べた、あの時が忘れられない(写真は忘れている)。かくして、初の水晶採取は、川削りながらも立派な「水晶」と言えるものを手に入れることができたのだった。翌日の帰り、こちらに寄って石を購入。そこでとんでもない物を見つけるのだった。 山梨県北杜市須玉町増富 増富鉱山 タビー水晶 https://muuseo.com/Matsu_Crystal/items/174 水晶好きな松ちゃん そう、昨日訪れたまさかの「増富」の水晶。3000円で売られていたのを見て、即買いしたのだった。自分の行った場所、記念の場所、そこで採られた美しい水晶。2024年の今でも、増富の水晶としてこれを超えるものを手に入れられていない。国産水晶を5月、8月と立て続けに購入し、さらに自採も達成。ここからいよいよ、水晶収集に歯止めが効かなくなって来るようになる、そう思っていた。しかし、当時は大学4年。就職の二文字が常に頭をよぎっていた時期で、8月の水晶採取中、他の大学生は皆就活に忙しかった。面接初日、横浜の青空ここから翌年まで、水晶欲をぐっと抑え、来年度に備えることとした。この時はまだ、歯止めが効いていた。それだけ就職の不安が大きかったのだろう。以降、しばらくは休みの日にブレスレットを制作することで、欲を満たす日々が続くのだった。