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ヴェルディ 運命の力 シノーポリ
■ウィーン・フィルとの優美なヴェルディ
そんなシノーポリが1983 年 12 月にウィーン・フィルと録音した
ヴェルディの 8 曲のオペラ の序曲・前奏曲。
シノーポリとウィーン・フィルの演奏会での共演はカルロス・ クライバーの代役に立った
1992 年 3 月の日本公演が最初ですが、すでに1983 年 6 月には
シューマンの交響曲第 2 番とマンフレッド序曲をドイツ・グラモフォンに録音しており、
またそれ以前にはウィーン国立歌劇場 での共演(上記「アッティラ」のほか 1982 年の「マクベス」)を
重ねており、お互いに馴染みの存在ではありました。
ウィーンでのセッションの直前にはベルリン・ドイツ・オペラとの「マクベス」をフィリップスに、
直後には英国ロイヤル・オペラとの「マノ ン・レスコー」をドイツ・グラモフォンに録音するなど、
ちょうど CD という新しいフォーマットのための新規カタログ拡大が急務であった
レコード業界における「時代の申し子」ともいうべき積極的な録音活動を始めていたシノーポリの勢いが、
このヴェルディ序曲集にもそのまま封じ込められています。
またウィーン・フィルの体質ゆえか、シノーポリは持ち前の激烈な解釈を押し付けるのではなく、
オーケストラの持つ優美な音色を積極的に生かすようにしているのもこの録音の特徴で、
「運命の力」や「ナブッコ」の冒頭の柔らかな金管の響かせ方、
「アイーダ」や「椿姫」での流麗なカンタービレなど、
決して美感を損なわずにヴェルディの音楽のエッセンスを伝えることに成功しています。
この特質は、やがてシノーポリの 1990 年代以降の短い最晩年の演奏で聴かれるようになる、
急速に変化・成熟してゆく音楽作り
( 1992 年にシュターツカペレ・ドレ スデン首席指揮者就任以降)の
萌芽ともいえるでしょう 。