65回目の日記 岩波ホール閉館

初版 2022/01/12 16:38

改訂 2022/01/14 15:33

 昨日(2022年1月11日)に表題の報道がなされました。その内容を総合すると以下のとおり;

 『東京・神保町の老舗ミニシアター「岩波ホール」が11日、7月29日で営業を終了すると公式ホームページで発表した。公式HPでは「新型コロナの影響による急激な経営環境の変化を受け、劇場の運営が困難と判断いたしました」と発表されている。1968年2月に多目的ホールとして開館し、故・川喜多かしこ氏と同ホール総支配人の故・高野悦子氏が名作映画上映運動「エキプ・ド・シネマ」をスタート。「エキプ・ド・シネマ」は「日本では上映されることの少ない、アジア・アフリカ・中南米など欧米以外の国々の名作の紹介」「欧米の映画であっても、大手興行会社が取り上げない名作の上映」「映画史上の名作であっても、何らかの理由で日本で上映されなかったもの、またはカットされ不完全なかたちで上映されたもの」「日本映画の名作を世に出す手伝い」という4つの目標を掲げていた。80年代に流行したミニシアターの先駆けとして存在し、これまで公開した作品数は65カ国・地域の271作品にのぼる。』

 まあ、正直な感想は、何となく覚悟はしていたけれども、とうとう現実のものになってしまった、というところですかね。神保町は大学の研究室に出向していた際は乗換駅だったこともあり、自分の趣味と相まってよく訪れたのですが、地下鉄から地上にへの出口のあるビルの1階に劇場の入場券売り場があるなど、実際に上映されている映画を観る以外でも、個人的には馴染みが少なからずありました。もっとも、実際にここで映画を観たのは、社会人になってからよりも学生の時の方が頻度は高かったですが…。

 個々の上映作品を挙げるときりがないので、それらについては今後の関連アイテムを展示する際に触れることとしますが、思い返して気付いたのが、その代表作の多くを岩波ホールでは観ていなかった、ということです。例えば『惑星ソラリス』は三百人劇場で、『旅芸人の記録』は有楽町スバル座で、といった具合で、要するに「エキプ・ド・シネマ」の範疇の作品は、それなりのブランド力を持つことになった、ということの証左だったわけです。

 7月29日までにはまだ日数がありますので、もし閉館に関する特別上映などが行われるならば、また出かけてみたいですね。ということで、この作品も岩波ホールで観たわけではないですが、その上映作品群の中でも、最も感銘を受けた作品の一つのパンフレット画像を掲げることとします。

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 映画音楽とクラシック音楽をこよなく愛するwoodstein(ウッドスタイン)という者です。それ故、必然的にCD、レコードコレクターであり、他人にその保有数を告げると、殆どの場合、引かれてしまうという困り者です。自分でもコレクションを把握できていないという体たらくでして、この場を通じて、実情を解き明かしていこうと目論んでいます。

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    toy ambulance

    2022/01/13 - 編集済み

    私は大阪在住なので、岩波ホールには直接行ったことは有りませんが、エキプ・ド・シネマのおかげで観ることが出来た作品は沢山有ります。一時期のシネ・セゾンとの混同が有ってもいけないので、作品名を並べることは避けようと思いますが、ジャン・ルノワールで言うと、お気に入りの「ゲームの規則」もエキプ・ド・シネマだったと記憶しています。

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      woodstein

      2022/01/14

       toy ambulanceさん、コメント有難うございます。本文でも触れた4つの目標により選択された作品は、特にエキプ・ド・シネマ開始当初数年の上映作において、その理念が濃厚に反映されており、そのような評価を得た作品は、岩波ホールから他の劇場へその上映機会を拡大できたということで、ある意味、文化の発信地点でもありました。
       その後、toy ambulanceさんも掲げられたシネセゾン開始もあり、ミニシアターは80年代の社会現象にもなったのですが、そこにはフランス映画社の存在が大きく貢献していた、というような話はいずれ関連作のアイテムを展示する際に触れられれば、と思っています。
       『ゲームの規則』はジャン・ルノワール監督作品としては『大いなる幻影』よりも相当知名度が低いのは、作品の出来を思うと、様々な経緯が原因であるとはいえ残念なことです。ですが、エキプ・ド・シネマにより本邦公開にこぎつけられたのは、せめてものことでした。

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