安土町二丁目 箱場印

初版 2022/11/03 07:57

改訂 2022/11/03 13:06

安土町二丁目の箱場印は他のものと全く違って、管理者の苗字「飯塚」まで彫られており、一見すると商人の私印のような感じがいたしますが、印の中に「郵便箱場」、「郵便御用」とあるので、私印ではない、郵便関連の押印であることがわかります。

縦長(Type A)と、大型の丸印(Type B)の二種類が確認されています。

Type Aは「安土二郵便箱場飯塚」が掘られた大型の縦長印で、「郵便箱場」という言葉が使われており、まさに箱場印という感じの、印象に残る印影です。

この印が存在することにより、郵便箱場の管理者が、郵便箱に投函された郵便物に管理用の印を押すというシステムが存在したことが明らかになったという点では、わざわざこのような大型の印を作ってくれた飯塚さんに感謝しなければいけません。

ちなみにこの脇なし二つ折葉書には「川支延着」という事故証示印が押されており、華を添えてくれています。宛先は東京で、大阪を6月18日に差立てられたもので、通常は翌々日には東京に着くはずですが、途中の河川で増水などで通行止めとなったのでしょうか。四日後の6月22日にようやく東京に着いています。

明治時代の郵便物は配達の管理が徹底していたようで、遅延や宛先違いでの転送などの理由がさまざまな事故証示印で押印されたり、付箋に記されています。このような郵便物を眺めていろいろな物語を想像するというのも、切手収集の愉しみかたの一つです。

Type Bはさらに盛りだくさんで、真ん中の「郵便御用」を囲むように「大阪・安土町堺筋角・飯塚」が彫られています。不統一印に見間違えそうになるほどの立派な印影です。

郵便箱場の具体的な場所まで解るという点では唯一の箱場印であり、貴重な記録であると言えましょう。

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unechan

子供の頃から細々と続けてきた切手収集。長年のブランクを経て10年ほど前から再開し、日本切手クラシカル、ドイツインフラなどを収集。併せて手彫証券印紙の収集を始め、現在はこちらがコレクションのメインになっています。郵趣に加えて音楽(ジャズ)、釣り、鉱石収集、昆虫採集(蛾類)など趣味多数にて家族には迷惑をかけております…

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    利右衛門

    2022/11/03 - 編集済み

    はじめまして。
    ふらり立ち寄ったら面白くておもしろて、読みいってしまいました!
    1つの葉書?に押された印から、当時の郵便システムの事が色々分かるのですね。
    顔も知らない飯塚さんに、親近感すら感じてしまいました(笑)

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      unechan

      2022/11/03

      利右衛門さま、お立ち寄りいただき、コメントまで頂戴しありがとうございます。

      箱場印というものも切手収集趣味(郵趣)の中では比較的マイナーなマニアックなジャンルなのですが、私が箱場印に興味をもって蒐集を始めるきっかけになったのがまさにこのType A・「安土二郵便箱場飯塚」印だったのです。

      最初は何物か全く分からず、さっぱり見当がつかなかったのですが、このLabログにもしばしば登場する「摂河泉の郵便印」という古い文献を(これまたたまたま)入手して正体が判明した次第でした。それ以降、地元ということもあり、機会を見つけは箱場印を集めて、当時の郵便システムに思いをはせている次第です。

      飯塚さんのご子孫がおられたらお礼を申し上げたいです(笑笑)

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