未発行1銭陶貨

0

昭和20(1945)年の終戦前に製造された、1銭硬貨です。日中戦争の開戦以後、臨時通貨法に基づき軍需資材となる金属の貨幣は回収され、代用の貨幣としてアルミ貨や錫貨が製造されていました。しかし、戦局の悪化に伴いアルミが、次第に錫すらも不足してきたため、昭和19(1944)年10月に「陶貨製造準備会」が設立され、陶貨の製造が計画されました。

第一次世界大戦後にドイツで発行されたノートゲルト(地方貨)の陶貨をモデルとし、造幣局で製造できなかったために有田、京都、瀬戸の各民間事業者にて7億枚(1銭陶貨)製造することが計画されました。昭和20年7月には量産に成功するものの、実際には10銭陶貨、5銭陶貨とともに1,500万枚しか製造できず、発行するには充分な量とはいえませんでした。そのまま終戦を迎えたため、ついに陶貨は発行されず破砕処分されることとなります。廃棄のため管理されていたにもかかわらず一部が流出し、その流出した陶貨が現在でも残っています。1銭陶貨は、現存する日本の試鋳貨・未発行貨のなかでは最も枚数が多いです。

素材としては、三間坂粘土60%、泉山石15%、赤目粘土15%、その他10%で製造されています。1銭陶貨は小さすぎる等の理由で年銘を刻むことができず、日本の貨幣では珍しく年銘のない貨幣となっています。製造上、また材質上の理由から、デザインや色にばらつきがあるようです。

Default