『宇宙戦争』/ H・G・ウェルズ《ハヤカワSFシリーズ》

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早川書房より、1969年に発行された『宇宙戦争』THE WAR OF THE WORLDSです。ハーバード・G・ウェルズ/著、宇野利泰/訳で、原書は1898年に発行されました。俗に“銀背”と言われるハヤカワSFシリーズですが、この本は金背となっています。
あまりにも有名な、世界初の地球文明外からの侵略を描いた空想科学小説です。
“ある夜、赤く、妖しく輝く火星の表面に、奇怪なガス体の大発生が観測されたーーだが、ごく少数の天文学者をのぞいて、それがそののち世界を震撼させる大事件の、そもそもの始まりだったことを、だれも知らなかった!
それから6年め、イギリスのサリー、ミドルセックス、バークシャー各州の人々は、夜空を切り裂くすばらしく大きな流星をみたいだがそれは、ただの流星ではなかった。大気との摩擦ですさまじい高熱を発したそのシリンダー様の物体は大音響とともに地上に落下し、大きな穴をあけて半ば地中に埋まったのだが……驚いて集まってきた人々の眼前で、蓋が取れ、中から異様な生物があらわれたのだ!
それは、見るからに醜怪な怪物だった。V字型にえぐれた口、二個の大きな動かない眼、眉毛もあごもないのっぺりとした顔、ゴルゴンの髪にも似た、なん本もの触手ーー火星人だ!
驚きさわぐ人々にむかって、火星人は恐るべき死の光線を発射した。光線は、人も森も建物も、かたはしから焼き払った。銃も大砲も、爆弾でさえ彼らを喰いとめられないのだ……!”
著者ウェルズが、地球外からの侵略という着想をどうやって得たのかは、少なくともビクトリア時代の英国でも、他の天体にも知的生物がいるのではないか、という色々な論説随筆や詐欺話などあったようなので、それらからではないかと思われます。
次のような辛辣な凄い文章(第一章)を書けるのは、当時随一の文明批評家であったH・G・ウェルズだけではないかと感心します。
「かれら(火星人)を冷酷に非難するまえに、われわれそのものが、いかに残忍に、野牛やドードー鳥といつたものを狩りあさったか。いや、すでに絶滅した生物ばかりではない。おなじ人類のうちでも、劣等な種族とみると、これにくわえて恥じなかった残虐を思いおこすべきである。タスマニア人は外見からいつても、りつぱな人類の一種族であったが、ヨーロッパからの移住民がくわだてた絶滅戦争によつて、五十年のあいだに、完全にこの世からあとを消した。火星人が同一の精神をもつて、われわれに戦闘をいどんできた場合、それを正当に非難できるほど、われわれは慈悲の使徒といえるであろうか?」
人種偏見や宗教偏見がごく当たり前だった時代に、このような考えを表明できた人は何人もいないのではないか、と思います。
#侵略SF #H・G・ウェルズ #宇野利泰 #ハヤカワSFシリーズ
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火星人類の逆襲 / 横田順彌《新潮文庫》
新潮文庫より1988年に発行された『火星人類の逆襲』です。横田順彌/著、文庫版モノクロ357頁、ISBN4-10-142103-X、定価400円。(カバーイラストはバロン吉元氏による) 明治物に定評があるSF作家・古書研究者横田順彌氏(1945-2019)によるSF小説です。横田氏は、明治の冒険小説作家・押川春浪と彼が主催した天狗倶楽部に興味を持ち、彼ら明治青春群像の活躍する小説を手掛けていました。画像2は横田氏の手掛けた押川春浪の評伝(徳間文庫)です。押川春浪は「海底軍艦」シリーズなど冒険小説作家として知られています。 “明治四十四年八月、巨大な円筒が東京湾に落下した。円筒から姿を現した四台の怪異な機械。それはなんと十三年前にもロンドンを襲った火星人類の戦闘機械だった。 高熱光線を発し、帝都を焼き払う戦闘機械。帝都危うし! この危機に決然と立ち上がる押川春浪、吉岡信敬らバンカラたちの集団・天狗倶楽部の面々。帝都の運命や如何に!” あらすじで分かるように、この小説はH・G・ウェルズ「宇宙戦争」のスピンオフとして書かれた作品ですが、登場する人物は、乃木将軍から市井の一般人に至るまでほとんどが実在の人物です。 横田氏によって活写された明治の日本人たちがSF的状況にどう立ち向かうか、SF的結末も含めて、大変楽しめる作品になっています。 #宇宙SF #冒険小説 #横田順彌 #押川春浪 #新潮文庫
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