『タイム・マシンーH・G・ウェルズ短編集IIー』《ハヤカワSFシリーズ》

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早川書房より、1963年に発行された『タイム・マシンーH・G・ウェルズ短編集IIー』です。H・G・ウェルズ/著、宇野利泰/訳。この本も古典であるため、“金背”ハヤカワSFシリーズとなっています。
ウェルズ先生の本質は、単なるSF作家というよりも、文明批評家としての卓抜な才能だったと思っていますが、「宇宙戦争」「透明人間」そしてこの「タイム・マシン」など数々のSFのアイデアを残してくれた偉大な《SFの父》の一人だと思っています。
“コナン・ドイルが近代探偵小説の始祖であるように、H・G・ウェルズはサイエンス・フィクションの創始者だ。とくに空想科学小説のアイデアの原型は、H・G・ウェルズにおいてすでに出つくしたといってもまちがいではないだろう。火星人が地球を侵略してくる侵略テーマ、軌道をふみはずした宇宙の漂泊者が、地球めがけて突進してくる衝突テーマ、物体を透明にする透明テーマ等々……。彼がつかわなかった着想は一つもないといっていい。
タイム・マシンも、ウェルズの想像したもっとも典型的な空想的着想の一つである。時間を、この世界を形成する第四次元の平面としてとらえ、過去へ、あるいは未来へと、時を遡り跳躍するという着オスは、空想科学小説になくてはならない重要なジャンルを一つ付け加えたのだ。”(解説より)
収録作5編は「塀にある扉」「陸の甲鉄艦」「魔法の店」「盗まれたバチルス」「タイム・マシン」。
ジョージ・パル監督による映画『タイム・マシンー80万年後の世界へ』(1960)、そしてそのオマージュであるニコラス・メイヤー監督の映画『タイム・アフター・タイム』(1979)は趣のある傑作です。
#空想科学小説 #古典SF #H・G・ウェルズ #ハヤカワSFシリーズ
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『宇宙戦争』/ H・G・ウェルズ《ハヤカワSFシリーズ》
早川書房より、1969年に発行された『宇宙戦争』THE WAR OF THE WORLDSです。ハーバード・G・ウェルズ/著、宇野利泰/訳で、原書は1898年に発行されました。俗に“銀背”と言われるハヤカワSFシリーズですが、この本は金背となっています。 あまりにも有名な、世界初の地球文明外からの侵略を描いた空想科学小説です。 “ある夜、赤く、妖しく輝く火星の表面に、奇怪なガス体の大発生が観測されたーーだが、ごく少数の天文学者をのぞいて、それがそののち世界を震撼させる大事件の、そもそもの始まりだったことを、だれも知らなかった! それから6年め、イギリスのサリー、ミドルセックス、バークシャー各州の人々は、夜空を切り裂くすばらしく大きな流星をみたいだがそれは、ただの流星ではなかった。大気との摩擦ですさまじい高熱を発したそのシリンダー様の物体は大音響とともに地上に落下し、大きな穴をあけて半ば地中に埋まったのだが……驚いて集まってきた人々の眼前で、蓋が取れ、中から異様な生物があらわれたのだ! それは、見るからに醜怪な怪物だった。V字型にえぐれた口、二個の大きな動かない眼、眉毛もあごもないのっぺりとした顔、ゴルゴンの髪にも似た、なん本もの触手ーー火星人だ! 驚きさわぐ人々にむかって、火星人は恐るべき死の光線を発射した。光線は、人も森も建物も、かたはしから焼き払った。銃も大砲も、爆弾でさえ彼らを喰いとめられないのだ……!” 著者ウェルズが、地球外からの侵略という着想をどうやって得たのかは、少なくともビクトリア時代の英国でも、他の天体にも知的生物がいるのではないか、という色々な論説随筆や詐欺話などあったようなので、それらからではないかと思われます。 次のような辛辣な凄い文章(第一章)を書けるのは、当時随一の文明批評家であったH・G・ウェルズだけではないかと感心します。 「かれら(火星人)を冷酷に非難するまえに、われわれそのものが、いかに残忍に、野牛やドードー鳥といつたものを狩りあさったか。いや、すでに絶滅した生物ばかりではない。おなじ人類のうちでも、劣等な種族とみると、これにくわえて恥じなかった残虐を思いおこすべきである。タスマニア人は外見からいつても、りつぱな人類の一種族であったが、ヨーロッパからの移住民がくわだてた絶滅戦争によつて、五十年のあいだに、完全にこの世からあとを消した。火星人が同一の精神をもつて、われわれに戦闘をいどんできた場合、それを正当に非難できるほど、われわれは慈悲の使徒といえるであろうか?」 人種偏見や宗教偏見がごく当たり前だった時代に、このような考えを表明できた人は何人もいないのではないか、と思います。 #侵略SF #H・G・ウェルズ #宇野利泰 #ハヤカワSFシリーズ https://muuseo.com/jason1208/items/754
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『タイム・アフター・タイム』《レーザーディスク》
米映画『タイム・アフター・タイム』(ニコラス・メイヤー監督作品、1979年公開、日本では1981年公開)のレーザーディスクです。 “1893年、多才に活躍する若きH・G・ウェルズの館に友人たちが集まっていた。ウェルズの発明《タイムマシン》のお披露目です。誰もがその性能を疑い、テストを躊躇う中、家政婦が警察官の来訪を告げる。「切り裂きジャックの追跡を行っている」と。会合に遅参した医師スティーブンソンの鞄から血まみれの手袋が発見されるが、スティーブンソンはどこにも見当たらず、《タイムマシン》も消え去っていた。再び実体化したタイムマシンの計器を確認すると、1979年という日付が確認された。H・G・ウェルズは時を越えて追跡する決意をするのだった。” 名手ニコラス・メイヤー監督による、時間テーマSFの傑作です。2017年には、この映画のスピンオフドラマ『タイム・アフター・タイム ~ H・G・ウェルズの冒険』が放映されたそうです。 #タイム・アフター・タイム #TimeAfterTime #マルコム・マクダウェル #メアリー・スティンバージェン #SF映画 https://youtu.be/huziaaaEd1s
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