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角川書店 角川文庫 夜光怪人
昭和五十三年十二月二十五日 初版発行
昭和五十四年二月二十八日 三版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和24年(1949年)から昭和25年(1950年)にかけて雑誌「少年少女譚海」に連載された横溝正史の長編小説「夜光怪人」。
つば広の帽子にダブダブのマントを着込み、帽子の下から能面のような表情の無い顔をのぞかせている怪盗・夜光怪人。その名の通り、全身から蛍火のような妖しい光を放つこの怪盗が、真珠王・小田切準造老人が所有する真珠の首飾り“人魚の涙”に続いて、古宮元伯爵家の家宝のダイヤの首飾りに狙いをつけた。古宮元伯爵の依頼で警備にあたる新日報社の花形記者・三津木俊助と“探偵小僧”の御子柴進。しかし、ダイヤの首飾りは奪われずに済んだものの、古宮元伯爵の令嬢・珠子が夜光怪人にさらわれてしまう。そして遂に、名探偵・金田一耕助が事件解決に乗り出す...
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。今回の悪役キャラクターは、全身から蛍火のような妖しい光を放つ怪盗・夜光怪人。大富豪や元華族たちが所有する宝石類を狙うばかりか、考古学者・一柳博士が発見した海賊の大宝庫の秘密を得る為に数々の非道な行いをする大悪党ですが、これに対するのが我らが名探偵・金田一耕助、そして、新日報社の花形記者・三津木俊助と“探偵小僧”の御子柴進のトリオです。あの金田一耕助と、横溝ワールドもう一人の名探偵・由利麟太郎の相棒である三津木俊助の夢の共演ではありますが...、実はこの「夜光怪人」、元々探偵役が由利麟太郎だったものを、山村正夫が横溝正史の了解のもとに改変したバージョンなんですね。その為、金田一が例の吃音癖もなく、由利先生のようなスマートな口調で喋ったり、物語の終盤に登場する「獄門島」の鬼頭儀兵衛や清水巡査とは「獄門島」事件の後にもかかわらず初対面扱いという、何ともちぐはぐなものになってしまっているんですね。どうせ改変するならば、そこのところも気を使って欲しかったと今更ながら思います。本書には表題作の他に「謎の五十銭銀貨」「花びらの秘密」の短編2編が併録されています。どちらも少年少女向け雑誌に掲載されたもので、暗号もの仕立てのお話ですが、如何にもジュヴナイルらしいシンプルな謎解きになっているのが微笑ましいです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 夜光怪人」です。どこかの令嬢のような女性を捕えようとしている妖しい光を放つ怪人。つば広の帽子にダブダブのマントを着込み、帽子の下から能面のような表情の無い顔をのぞかせている、夜光怪人を描いた表紙画ですね。ジュヴナイルであることは遵守しつつ、そこはかとなく杉本表紙画らしい淫靡さが漂っているのが良いですね。
表面に「帰って来た金田一耕助」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。
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