角川書店 角川文庫 怪獣男爵

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昭和五十三年十二月二十五日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和23年(1948年)に偕成社から書き下ろしで刊行された横溝正史の長編小説「怪獣男爵」。
瀬戸内海の真ん中に浮かぶ離れ小島、男爵島。島の中ほどに古柳荘という西洋の古城のような奇妙な建物が建ち、得体の知れない怪物が棲むという噂があるこの島に、突然の嵐に遭った、2人の少年と1人の青年を乗せたヨットが漂着してきた。3人は古柳荘に雨宿りを求めるが、彼らは部屋に閉じ込められ、ゴリラのような怪物にヨットを奪われてしまう。その怪物とは3年前に死刑になったはずの古柳男爵の脳をゴリラと人間の合いの子に移植した、恐ろしい“怪獣男爵”であった。復活した“怪獣男爵”が東京中を恐怖のどん底に陥れる...
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。昭和のジュヴナイルのミステリー作品に欠かせないものといえば、やっぱり怪盗や怪人といった悪役キャラクターだと思います。中でも江戸川乱歩のジュヴナイル作品に登場する大怪盗“怪人二十面相”はあまりにも有名ですが、横溝正史のジュヴナイル作品に登場する悪役キャラクターで代表的なのが“怪獣男爵”こと古柳冬彦男爵です。元々は世界で五本の指に数えられるほどの優秀な脳科学者でありながら、悪事に手を染め、死刑となった古柳男爵。しかし、世を恨む彼は、ゴリラと人間の合いの子に自らの脳を移植させて“怪獣男爵”として復活します。本格派を好んでいた小中学生の頃はそんな如何にも子供騙しじみた設定に今一つノレませんでしたが、今読み返すとまるで特撮ヒーローものの悪役みたいな趣がある“怪獣男爵”に、また違った感懐を抱くようになりました。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 怪獣男爵」です。雷鳴が轟き、荒れ狂う海に浮かぶ古城のような建物が建つ孤島と、それを見つめるゴリラのような怪物の眼。古柳荘がある男爵島と、“怪獣王”“ゴリラ男爵”とも呼ばれている“怪獣男爵”こと古柳男爵を描いた表紙画ですね。“怪獣男爵”の瞳に映る稲妻など、細部まで描き込んだ筆致が素晴らしいです。
表面に「帰って来た金田一耕助」の惹句、裏面に東映映画『悪魔が来りて笛を吹く』の公開告知が入った宣伝帯付きです。

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