角川書店 角川文庫 自選人形佐七捕物帳一 羽子板娘

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昭和五十二年四月三十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和13年(1938年)に雑誌「講談雑誌」に掲載された横溝正史の短編時代小説「羽子板娘」。
江戸三小町と呼ばれ、羽子板の押絵にもなった3人の評判娘、深川小町のお連・音羽小町のお蝶・神田小町のお組。その内、お連が水死体で発見され、次にお蝶が乳の下を抉られて殺されるという事件が起きた。奇妙なことに、お通夜中のお連の家に押絵の首のところを真っ二つに切り裂いたお連の羽子板が投げ込まれ、お蝶の死体の上にはやはり首のところを真っ二つに切り裂いたお蝶の羽子板が置かれていた。そして今また、お組の姿が見えなくなり、実家の質店の帳場には例によって首のところを真っ二つに切り裂いたお組の羽子板が置かれていた...
京人形のような美男子で、とにかく女にモテる岡っ引きの佐七が主人公の「人形佐七捕物帳」シリーズの第1作ですね。佐七が岡っ引きとして売り出していくきっかけとなった事件ですが、江戸情緒溢れる捕物帳らしい類型的なパターンの中にも横溝らしい本格ミステリーの手応えが感じられる作風は既に確立されています。本書には表題作の他に「恩愛の凧」「浮世絵師」「石見銀山」「吉様まいる」「水芸三姉妹」「色八卦」「うかれ坊主」の短編7編が併録されています。いずれも横溝正史自身が選んだエピソードですが、個人的には、エログロ・猟奇・名探偵対怪人という展開が金田一耕助シリーズの一連の“通俗モノ”を彷彿させる中編「浮世絵師」が興味深かったですね。角川文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 自選人形佐七捕物帳一 羽子板娘」です。小町娘の押絵が施された、艶やかな羽子板。しかし、娘の頬は切られ、血が滴り落ちています。小説では羽子板は真っ二つに切り裂かれていましたが、画柄の美しさを残しつつ、不穏な気配を纏わせたアレンジが秀逸です。
松方弘樹が佐七を演じた『人形佐七捕物帳(テレビ朝日系)』の宣伝帯付きです。(裏面には『横溝正史シリーズ』のラインナップ記載)

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