角川書店 角川文庫 自選人形佐七捕物帳二 神隠しにあった女

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昭和五十二年五月三十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和28年(1953年)に雑誌「読切小説集」に掲載された横溝正史の短編時代小説「神隠しにあった女」。
月がありながら雲に隠れて、風も何となく生暖かく、妙に若い血を騒がせるようなある晩、小松屋の手代・宗七は春をひさぐお千代船で、舟まんじゅうと呼ばれる売女を買った。降り際、月の光に照らされた女の顔をよく見ると、何とそれは数日前に神隠しあったと噂された宝屋の妹娘・お福であった。宗七とその主人・重兵衛から相談を受けた佐七が真相究明に乗り出す...
艶めかしい描写が多い中にも、横溝正史らしい謎解きを散りばめた作品ですね。人殺しこそ起きませんが、入れ替わりトリックと備前長船にまつわる人情噺を上手く絡めたストーリーテリングが流石、横溝といったところです。本書には表題作の他に「好色いもり酒」「百物語の夜」「彫物師の娘」「ほおずき大尽」「春宵とんとんとん」「緋鹿の子娘」「三河万歳」の短編7編が併録されています。いずれも横溝正史自身が選んだエピソードですが、個人的には、アガサ・クリスティの某有名作品のトリックを百物語というシチュエーションの中で使った「百物語の夜」の意外性が面白かったです。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 自選人形佐七捕物帳二 神隠しにあった女」です。見事な背中の彫物をこちらに見せている女。これは表題作「神隠しにあった女」ではなく、「彫物師の娘」をモチーフにした表紙画のようです。

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