角川書店 角川文庫 仮面劇場

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昭和五十年三月一日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和13年(1938年)に雑誌「サンデー毎日」に短編で連載され、その後、何度かの改題と改稿を経て長編小説となった横溝正史の「仮面劇場」。
ガラスの棺に入れられ、生きながら水葬に付されようとした三重苦(盲聾唖)の美少年・虹之助と、彼を引き取った富裕の未亡人・大道寺綾子の周囲で起こる陰惨な連続殺人を描いた、戦前の横溝正史の作品ですね。この時代の横溝作品の名探偵役を一手に引き受けていた“由利先生”こと由利麟太郎が登場するシリーズの一つで、「草双紙から抜け出してきたような」美少年が出てくる耽美主義・草双紙趣味が濃厚な作風は戦前横溝を代表する傑作「真珠郎」を思い出します。個人的には、この作品をコミカライズした高階良子の少女漫画「真珠色の仮面」が好きでしたね。原作の耽美主義・草双紙趣味を上手くすくい上げ、少女漫画独特の“ノリ”と画風で見事にビジュアル化していたと思います。
本書には表題作の他に「猫と蠟人形」「白蠟少年」、短編2編が併録されています。角川文庫には昭和50年(1975年)に収録されました。
画像は昭和50年(1975年)に角川書店より刊行された「角川文庫 仮面劇場」です。丸鏡に映る、襞襟の服を着た仮面の美少年。丸鏡にはヒビが入っていて、それが何とも不穏な空気を醸成しています。

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