山梨県甲府市黒平町 向山鉱山 前棚 長石内包水晶「南洋虞美人」

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「ミネラ」89号掲載

「南洋虞美人」という名称が付けられたこちらの煙水晶。

岐阜県で採取される「南洋美人」と違い、長石が内包するどころか、はみ出て長石に侵食されてしまったかの様な見た目をしています。そのため、美人ではなく虞美人。

形状自体は六角柱なので、しっかりとした水晶ではあるのですが、ほぼちくわ天状態なので水晶には見えません。一応錐面が複数あり、そのうち1つはX面が確認できました。小さいためドフィーネ式かは判別不可。

向山鉱山の前棚は、鉱山の入口近くの坑の名称。多くの坑は戦時中に掘られたものですが、こちらは江戸時代に既に知られていた産地なようです。

ちなみに、虞美人は三国志でいう項羽の寵姫のこと。四面楚歌状態で歌を詠んだ項羽に対し、項羽を思って返歌をした、ということで、悲哀のヒロインとしての意味合いが虞美人に込められているようです。

とはいえ、こちらの水晶はそんな悲しい意味合いはありません。美人と区別するために虞美人としたのだと思います。

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