47回目の日記

初版 2020/04/23 12:35

 本日、新たなフロアを設定し、そこにDVD「おかしなおかしな大追跡 特別編」を展示・登録しました。それはそれで見て頂けると有難いのですが、その紹介文を作成するにあたり、この作品を最初に観たときの思い出も添えようと認め始めたのですが、これが思いのほか長文となってしまい、結局、紹介文からは切り離すこととしました。とは言うものの、駄文とはいえせっかく作成した文章をこのまま没にするのも忍びなく、少し手を加えてこの場に上程させて頂くこととしました。ただ、内容的には全くの私事の記録ですので、気が向いた時にでも目を通して頂けると幸いです。


1.初めての名画座

 昭和50年代前半、不毛な学生生活を過ごしていた身にとって数少ない楽しみは、FMラジオの音楽番組やAMラジオのナイター中継を聴くことと、たまに放映される『刑事コロンボ』を観ることくらいでしたかね。学校の先輩や同級生が観に行った映画の話をしても私は意味も分からず相槌を打つだけで、話題に参加することはできませんでした。それでも、話の中身にはそれなりに興味がありましたから、学校の図書館が定期的に搬入していた『ロードショー』誌を放課後に読んだりしていたのですが、ある時その中に『名探偵再登場』の上映情報が掲載されているのを見つけました。因みに、情報誌『ぴあ』の存在は知ってはいましたが、その時期はまだ読んでいませんでした。で、なぜ『名探偵再登場』なのかというと、上述のようにその頃は『刑事コロンボ』の大ファンで、そのピーター・フォークが出演している映画をぜひ観たい、というその一念で、学校の試験休みを利用して、初めて一人で映画館に行くことを決心しました。場所は「大塚名画座」、邦画を専門に上映する「鈴本キネマ」という映画館が併設している劇場でした。学生証を提示しながらチケットを購入し、入口で捥り(もぎり)の人にチケットを渡して半券を受け取り、場内に入って席を確保する、この当たり前の一連の動作がいちいち新鮮でしたね。そして、上映が始まるのをワクワクしながらも、とりあえずロビーに戻って上映作品のパンフレットを購入したのですが、『名探偵再登場』のパンフはあったものの、併映作品のパンフは販売しておらず、その旨を尋ねると、すでに在庫がないと言われ、劇場に行ってもそこで上映されている映画のパンフレットが手に入らないことがある、ということを知りました。その作品が『おかしなおかしな大追跡』だったのですが、事前には、以前に観た『遠すぎた橋』のパンフレットに記載のライアン・オニールのフィルモグラフィーの中にそんな作品名があった、という程度の認識でした。ということで、『名探偵再登場』と『おかしなおかしな大追跡』の2本立て、なぜこんな組み合わせだったのかは、その時ばかりか、その後もしばらくわかりませんでしたが、要はマデリーン・カーンが両作に出演していたというつながりがあったようです。


2.バーブラ・ストライサンドって…

 先に上映されたのが『名探偵再登場』でしたが、これが本当につまらなかった、一念発起して名画座デビューした、そのお目当ての作品が完全に期待外れ、そして、やや失意のまま、もう1本の方の『おかしなおかしな大追跡』を観たのですが、期待していなかったこともあってか本当に面白かった、というか本当に笑いました。いわゆるスラップスティック・コメディの部分に嵌って(はまって)しまったわけですが、それよりも本当に嵌ってしまったのがバーブラ・ストライサンドの存在でした。人騒がせで自分の欲求を満たすためにはそこそこ姑息な手段も厭わない、冷静に考えればとんでもない娘の役柄を、コケティッシュで何となく憎めない魅力的な人物に演じ、最終的には他人の男の身も心も収奪しても、観客を納得させてしまうその力技は、いま考えても天晴れです。


3.楽しみ尽くしていない?

 『おかしなおかしな大追跡』が面白くて笑った、それは特に後半の大追跡劇のドタバタぶりが、その頃の私の笑いのツボに嵌ったからなのでしょう。でも、それだけだと監督のピーター・ボグダノヴィッチ、脚本のバック・ヘンリー、デイヴィッド・ニューマン、ロバート・ベントンの共同執筆者らがこの作品に仕掛けた様々なパロディ、オマージュを察して、味わい尽くしていないこととなります。ただ、それを果たすためには過去にどのような作品があり、またどのような内容であったかを知っている必要があるのですが、何といっても本格的な映画体験はこの時が最初ですから、当然知る由もなし。後年、少しずつ理解・納得することとなりました。その内容については、また別の本作関連のアイテムを展示したときに。


4.もっと嵌ったものは…

 この時の映画鑑賞は気分的には1勝1敗というところでしたが、その1勝のインパクトが大きく、もっと他の映画も観たい、という欲求が募りました。そして、この体験がその後名画座を中心に劇場で映画を観ることに嵌るきっかけとなりました。それまで手にすることのなかった、当時まだ月刊誌だった「ぴあ」を定期購読するようになり、そこで調べた情報をもとに、なるべく自分の通学定期券の範囲内、若しくは少額の交通費で行けて、入場料も500円以内の名画座を中心に週1回くらいのペースで劇場に行くようになり、ますます「映画」という深みに嵌っていきました。


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 映画音楽とクラシック音楽をこよなく愛するwoodstein(ウッドスタイン)という者です。それ故、必然的にCD、レコードコレクターであり、他人にその保有数を告げると、殆どの場合、引かれてしまうという困り者です。自分でもコレクションを把握できていないという体たらくでして、この場を通じて、実情を解き明かしていこうと目論んでいます。

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