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Acanthopyge sp.
今や幻種となっている存在感のあるAcanthopyge haueriと同型の新種が発見され、市場に出てきたのが2010年頃でした。mdl-storeのブログでは、新産地Boulachghaleとされる地の近郊とされていますが、広域で地名が無い土地のようで、以前のA.haueriが産出したMrakibとは産出場所は違うけど、エリアとしてはMrakib近郊との事で、詳細な産地地図も提供頂きました。ただ、こちらで公開は控えますので、mdl-storeのブログ通りの情報で正しいようです。A.haueriと比較すると華奢で尾部の尾板が小さく、尾部の長い棘は熊手の様に下に伸びているのが特徴です。その棘を含め無数の粗い棘が疎らに存在しており、Hammi氏の剖出により、それらが温存されています。新産地でも完全体自体が極めて少数であり、その中で頬棘が残る個体は数えるほどしか存在していないと言われており、新種も幻種となる思われます。 (2024.3産地情報の記述を更新しました)
Middle Devonian Lichidae,Lichioidea,Lichida TRI-755 -Trilobites
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Acanthopyge(Belenopyge) balliviani
南米ボリビアの高地で産出したAcanthopygeですが、ノジュールという産状のため、細部の保存は良好な一方、全体が残ったものや全体の縁が残り難い特徴がどうしてもあります。イメージとしては、モロッコ産のLobopygeとほぼ同じであります。ボリビア産自体が以前より入手がし難くなっていますが、その中でも本種の全体が残った個体は、とても貴重になってきています。
Middle Devonian Lichidae,Lichioidea,Lichida TRI-266-2 BelénTrilobites
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Monodechenella macrocephala
Monodechenellaは、Proetida(目)中では最も高額な種類の一つでした。見た目が派手という訳ではないので、単に産出が少なすぎるという事情もあったと思います。モロッコ産のDechenellaと比較すると別物と思えるくらい特徴が異なり、寧ろ同じ北米のオハイオ州、ミシガン州、カナダのオンタリオ州等で産出するPseudodechenellaに近縁と思われます。全体的にふっくらとしており、大きな頭鞍と背から尾部にかけて細い棘があったと思われる突起も確認できます。最大の特徴は、全身に細かい顆粒がある事だと思います。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-689 LudlowvilleTrilobites
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Ductina(Illaenula) vietnamila
三葉虫コレクターが軽視するけど、実は謎の産地は幾つかあると思いますが、本種も該当するのではないでしょうか。ドイツなどで産出する事で知られる眼の無いファコプスDuctina、小さくて地味で安価なので、意外とベテランコレクターでも所有していない方もいる筈です。近年はIllaenula(Illaenusと紛らわしいが)と呼ばれる事が多くなったり、昔からのD.vietnamicaも混在するなど混乱する状況も見えます。小種名からベトナムと関連するか、ベトナムで近縁種が産出する可能性もあるのかもしれませんが、詳細は分かりませんでした。中国では数少ないデボン紀の三葉虫産地で、市場では本種位しか見かけませんが、Cyphaspidesや眼のあるPhacopsなど三葉虫の種類は知られています。 (中国名:越南沟通虫)
Middle Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-34 -Trilobites
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Malvinella buddeae
入手時は、Calmoniidae(科)の一種という名称で学名不明でした。ノジュール中に埋もれるデボン紀ボリビア産の三葉虫は、見た目が同じように見えてしまうのですが、Malvinellaは一目で区別ができます。それ程、密に生えている訳ではありませんが、全身が棘で覆われていたと思われる突起が確認できるからです。大きくならない種類でありますが、ノジュールという産状であり、棘として取り出す事ができないのですが、実物はもう少し長くて細い棘が生えていて派手な種類だったと想像できます。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-267 BelénTrilobites
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Scabriscutellum sp.
背中に棘のあるScabriscutellumが登場しだしたのは、1990年代後半だったと記憶しています。デボン紀モロッコ産は、既に様々な棘々種が登場していましたが、サンドブラストを用いた革新的な剖出技術の向上により、より繊細な体表面の凹凸を飛ばす事なく残す事が出来た要因が大きいと感じます。それまでは、棘があるなんて全く想像もしていなかったScabriscutellumに新たな姿があったとは驚きを得ると共に、更にモロッコ産三葉虫の多様性と保存の良好さに魅了されて行くのでした。本標本も保存が良い個体に見られる尾板縁のギザギザが確認できます。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-721-2 -Trilobites
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Scabriscutellum sp.
尾部を改札鋏で切り込みを入れた様に切り取られています。しかし、その後も生き抜いたのでしょう、縁取りは丸く滑らかになっています。脱皮直後に別の生き物に捕食されかけたと思われますが、相手が何物だったのか今となっては不明です。尾部の切り取られた場所の近くの尾部の中心付近も歪みが生じています。このScutellumは、胸部に一つずつ垂直方向の棘が並ぶ種類です。棘のあるScutellumは市場に登場して暫く経ちますが、まだ正式な学名が確認できません。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-518-2 -Trilobites
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Asteropyge eonia
ベルギー国境に接するヴィルー・モルハイン(Vireux-Molhain)にはデボン紀の地層があり、周辺のドイツ、ベルギー、などと共通のデボン紀の三葉虫が産出します。現在は国立自然保護区に指定され採掘はされませんが、多くの種類が確認されています。保存状態だけ見ると他のエリアには敵わないのは事実ですが、味わい深い焦げ茶の化石は、欧州の三葉虫らしい渋みを持っています。Greenopsは比較的多く産出しますが、本種を始め数が少ない種類は入手が難しい産地です。
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-685 JemelleTrilobites
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Greenops widderensis
見た目がモロッコの一般種、Hollardopsに近いので一般種に錯覚しますが、北米のGreenopsは簡単に入手できない種となっています。オンタリオ州(カナダ)やニューヨーク州(米国)で産出しますが、Greenopsの中では本種は最も入手はし易い種と思います。ニューヨーク州では、見た目がほぼ同じのBellacartwrightia(中葉に1列の細かい棘の痕跡)も産出しますが、Greenopsの方が希産で小型である事が多いです。 【標本リンク】Fossilera https://www.fossilera.com/fossils/85-greenops-trilobite-hungry-hollow-ontario
Middle Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-707 WidderTrilobites
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Greenops boothi
Greenopsは、北米では古くから知られる種類で、モロッコのHollardopsを小さくしたような種類です。見た目は一般種ですが、近年は簡単に入手できない種類となってきました。この標本は、一見すると何か分かり難いですが、よく見ると複眼が見え、更に胸部と尾部の白っぽい殻が確認できます。周りを飾るように覆っているのは、黄鉄鉱です。まるで蝕まれているのに黄鉄鉱に包まれていますが、生前ではなく化石化した時に置換して結晶が成長したもので、極めて稀な現象です。この産地は既に消滅していると思われ、後にも先にも同様の標本は見かけません。
Middle Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-128-2 LudlowvilleTrilobites
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Thysanopeltis sp.
Septimopeltisの名前でも見かけます。Thysanopeltisの中ではType.Bと呼ばれる種類です。尾板を縁取る棘が大きい棘と小さい棘と交互に並んでいます。時期的には正確には覚えていませんが、通常のThysanopeltisしか見かけなかった2006年位に突如登場し、驚いたのを覚えています。その後通常のThysanopeltisより多く見かける時期もありましたが、近年は見かけなくなりましたので、枯渇した可能性があります。Thysanopeltisは、この様に幾つかのバリエーションを産地より持ち、収集しがいがあるのですが、一般種とは思えない位に入手が難しい種類です。
Middle Devonian Styginidae,Illaenina,Corynexochida TRI-295 -Trilobites
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Gerastos tuberculatus marocensis
デボン紀モロッコ産の入門種としてコレクターの多くが収集初期に購入する種類です。それほど高価でもなく、小型で派手さも無いので軽視しがちの種類であります。大きく膨らみツブツブに覆われた頭鞍、迫出した複眼もぷっくりと大きく、見た目が可愛い三葉虫で、個人的には大好きな種類です。ドイツなど欧州のデボン紀の地層から見つかるGerastos granulatusと見た目は同じの為、同種として扱われる事がありますが、近年、やっと記載が開始される様になりました。頭鞍の顆粒の状態など見分けるポイントは論文にあるのですが、実際にはこの種以外は見かけないと言って良いレベルです。また、細かい種の同定は、レベルの高い剖出がされていないと不可能です。
Middle Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetida TRI-42 TimhanrhartTrilobites
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Eldredgeia venustus
2000年位までは、Metacryphaeus cafferという学名で市場に出ていましたので、古くからのコレクターは、こちらの学名の方がしっくりくるかもしれません。デボン紀ボリビアの三葉虫の中で、最も多く採れる種類で、市場に出ている個体の9割くらいはこの種類の様に思います。他のボリビア産同様にノジュール中から産出しますが、やはり大部分は部分化石です。数が出るため他の種類と違い、全身が残った状態でノジュールから出てくる確立が高いだけです。この標本の様に風化していない状態ですと複眼だけでなく、体表面の顆粒など綺麗な状態で保存されています。 [Left side:Negative,Right side:Positive]
Middle Devonian Calmoniidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-22 BelénTrilobites
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Gravicalymene teddersensis
カリメネといえば、オルドビス期とシルル紀に大繁栄して絶滅したと思われがちですが、デボン紀にも生存していました。Gravicalymeneは、日本の岐阜県高山市福地のデボン紀の地層からも発見されております。モロッコのGravicalymeneは、産出自体が極めて貴重でカリメネと馬鹿にできない位に高価です。以前から存在は知られていたものの、見つかったのは数個体のみで殿堂級の存在でした。本標本は、まるでオルドビス期のDiacalymeneのように巨大で存在感があります。カリメネは、デボン紀には希少種に成り下がり、既に生きた化石という位置付けだったのでしょうが、姿を変えずに生き残っていたという事は、現在のサメのように完成されたフォルムであった事の裏付けといえるでしょう。
Middle Devonian Calymenidae,Calymenina,Phacopida TRI-414 MegraneTrilobites
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Harpes perradiatus
Harpesという種類は、古生物と言うよりは未来的なデザインだと思います。大きな鍔が後方にかけて緩やかにカーブを描いて流線形をとり、未来の乗り物みたいです。この鍔ですが、無数の細かい孔(貫通はしていない)がびっしりと並んでいます。この種類、モロッコ産でも一般的なHarpesですが、コレクターなら探していて分かると思いますが、状態の良い標本が本当に少ないです。この標本は、鍔の細かい孔が荒れずに残っていて、更に蛇腹状の細かい体節も真直ぐ伸びている奇跡的な保存状態で、見ていて惚れ惚れします。
Middle Devonian Harpetidae,Harpetioidea,Harpida TRI-7 -Trilobites