革底のお手入れ

初版 2023/01/03 00:11

改訂 2024/03/10 09:53

レザーソールの革靴を履いていると必ず底が傷みます。「道具としての靴」の宿命としてこれは避けられません。私はオリジナルの革の状態を出来るだけ維持したいので、どうすれば革底が長持ちするのか考えました。革の一番の大敵は水です。ですから水が出来るだけ染みないようにする必要があります。単純に考えれば「ラバー貼ればいいんでない?」となりますが、ゴムを貼ると雨のない日は靴の中の湿気を排出しづらくなります。だから革に何も貼らないで、水の影響を出来るだけ少なくする工夫が必要になります。。

初期のころはミンクオイルを底に塗っていましたが、かなりベタベタしますし、ソールが柔らかくなりすぎて履き心地が低下します。いろいろ探していたのですが、1993年頃、レザーソール保護に最適と思われる商品を発見しました。それがKIWIのWET PRUFです。

この「ウェットプルーフ」は登山靴の世界では以前から有名な商品だったようです。私は缶のデザインもなんかいいなあと思って購入し、何の気なくソールに塗ってみました。すると革にスッと染み込んで表面に被膜が出来ます。ミンクオイルのように革も柔らかくなりません。

初期のウェットプルーフはシンガポール製でした。この頃の品質が最高で、ソールに塗るとサッと染み込み被膜が形成されます。塗る量も少なく済んで経済的です。しかも歩いても全く滑らないのに驚きました。

90年代後半になり、インドネシア製に変わりました。甘い匂いになり、浸透性は低下します。革になかなか浸透しないためクリームの層が表面に残ってベタベタし、そのため外を歩くと小石がソールに付着してむしろソールを傷めるのを早めてしまいました。

この品質を見て私はこの商品とは「おさらば」しました。

最近ウェットプルーフのデッドストック(スプレー式)を見つけたので、3缶ほど買ってみました。性能はまだ分かりません。

2000年頃、平行して別の商品を探して見つけたのが英国製の「チェルシーレザーフッド」です。

乃木希典のような軍人さんとおぼしきおじさんが描かれています。何度か使ったのですが、結局これも革にあまり染み込まないため、止めてしまいました。以後様々な商品を試してみましたが、WET PRUFの性能を持つものはありませんでした。

古くはこんなデザインでした。

購買意欲はそそられませんね(笑)。

最近使っているのがドイツ製のBurgolのレザーソール用オイル。少量を皿に載せ、水彩画に使うような専用の筆で少しずつソールに塗っていきます。液体なので浸透性は素晴らしく、加えてかなりしっかりした被膜が作られます。塗布後、コットンの布で磨くとしっとりした輝きが得られますが、歩いても滑りづらい優れものでした。

ウィスキーの瓶を思わせるデザインも気に入っています。

実際の使用前後の画像は後日掲載したいと思います。

1990年3月に行ったロンドンで、初めてエドワードグリーンのドーバーを購入しました。以来、ここの靴の虜になりました。質の良いしっとりとしたカーフ、美しい木型、無い物ねだりと分かりながら、この時代のエドワードグリーンの靴を今も追い求めてしまいます。
他に古い靴も修理して履いています。特に戦前の英国靴は素晴らしいと実感しています。

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    mjmat

    2023/01/03 - 編集済み

    try & error のレポートが,とても面白かったです。
    同じ製品でも,ロットによって性能が違うというところが,とても共感できました。(意外にわかってもらえる人が周囲に少ないので・・・)

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      グリーン参る

      2023/01/04

      try & errorどころか、エラー&エラーということの方が多いのですが、とにかくいろいろ実験だと思ってやっています(笑)。

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      mjmat

      2023/01/04

       誰がやっても同じ結果になることには,あまり興味がありません。大切なモノや価値の追求のために汗をかく姿勢に,惹かれます。
       今年もよろしくお願いいたします。

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      グリーン参る

      2023/01/04

      mjmatさん
      お返事ありがとうございます。「正解がない」というのも面白いものですよね。旧エドワードグリーンに関しては、「オークバーク」というタンニン鞣しの革を使った、オリジナルのソールを出来るだけ長く維持したい、という願望からこうした実験をするようになりました。
      無くなってしまった愛用靴クリームには、コロニルのディアマンテという商品があります。画像左のものです。これはドイツ製ですが、シダーオイルを使った有機溶媒がほぼ含まれないクリームです。浸透性が高く、基礎化粧品のように素肌を守るようなクリームでした。「革に栄養を与えた結果として光る」‥‥そんな商品でした。最近よく言われる「鏡面磨き」はやはり革には悪い影響があると思います。松ヤニのようなちょっとツンと鼻にくる匂いも好きでした。数年前に商品が右のものに変りましたが、松ヤニの匂いはなくなり、塗ったあとの輝きもちょっとだけ落ちました。使い慣れていた商品が廃版になるのは悲しいですね。

      こちらこそ本年もよろしくお願い申し上げます。

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      mjmat

      2023/01/04 - 編集済み

       詳しく教えていただきありがとうございます。 普段使いしているもので,性能が(たいていは低い方に)変わってしまうのはとても困りものです。特に革製品のお手入れのクリームのように,取り返しがつかなくなりそうなものの場合,慎重にならざるを得ないのではと推察します 僕の場合は,ベニヤ板や溶き油(油彩画用)程度なので,今のところはそれほど大きな影響はないのですが。

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