- 909 Museum
- 4F 諏訪根自子さん展:媒体掲載
- 静かなる登攀 高須 茂 1941(昭和16)年
静かなる登攀 高須 茂 1941(昭和16)年
音楽誌以外のところで戦前・戦中を通したそんな時代の日常に流れたであろう"諏訪根自子の音"が垣間見える…音楽評論家でない方々の記述に幾つか触れる事が出来ました。
それは自分と音楽知識的にはきっとそう変わらないであろう皆様の筆で、それ故により身近に感じ得る事が出来ます・・・
「冬の日記」
まだ八時すぎだといふのに、
雪あがりの夜は静かなものだ。
階下のラジオが、
諏訪根自子のヴァイオリン・ソロを放送してゐる。
サラサアテの「ロマンザ・アンダルザ」。
私は机に頬杖を突いて、
ぼんやりとこの抒情的な舞曲を聴いてゐる。
-私の部屋には堆高い書物と、
火のない火鉢があって、
この十二月五日の夜を、
みなうつうつとしてゐる。
『静かなる登攀』高須 茂 1941(昭和16)年
この登山家の方の日常の1㌻の描写がもしこの本の刊行された年であるなら、この3日後の12月8日に日本は太平洋戦争に突入する事になる。よしんば前年の事であるにせよそんな頃に流れた音であるのは違いない。
「ロマンサ・アンダルーサ」は1935年3月発売のレコード(録音は前年)。
https://muuseo.com/nine_o_nine/items/135?theme_id=39652
表紙画像は転載させて頂きました。
#諏訪根自子 #NejikoSuwa