Bill Evans/Waltz For Debby

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「Waltz For Debby」
素晴らしいビューがありましたので、自分の為に転載させて頂きます。
「きちんと撫でつけた髪に黒縁メガネ。真一文字に結ばれた口元。たまに煙草をくゆらせているものもありますが、ビル・エヴァンスのポートレイトというと、そんな印象が強いのではないでしょうか。ミュージシャンというよりは、銀行マンか学者。知的で神経質なまでに生真面目。実際、彼のピアノはクラシック音楽に影響を受けていますし、そういったところも彼の第一印象を作っているのかもしれません。が、彼は長年、薬物依存の状況にあり、晩年はピアノ演奏が不可能ではないかと思われるほど指が腫れあがっていたことがあるようです。さらに喫煙歴も長く、両方の影響で前歯がボロボロに。それを隠すために、ポートレイトでは口を固く結んでいたんだとか。何が彼をそのように追い込んでしまったのか。今となっては知る由もありませんが、『Walts for Debby』にまつわる出来事も大きな影響を与えているように思います。
『Walts for Debby』は、名門ジャズ・クラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」でのライブを収録したもの。当時、ベースのスコット・ラファロは、「ようやく自分が満足するレコードが出来た。“いいもの”が入っているね」とビルに語ったそうです。
確かに、タイトル曲「Walts for Debby」の可憐で繊細なメロディー、クラシックでもあり、ジャズでもある流麗で気品にあふれたビルのピアノ・タッチ、優しく包み込むようなラファロのベース、軽妙にリズムを刻むポール・モチアンのドラムスが織り成す絶妙のアンサンブルには。思わずうっとりと聴き入ってしまうほどの魅力があります。
そして、ビルが生涯にわたって弾き続けた「My Romance」では、軽やかで流麗な中にも気品を感じさせる美しいピアノ。脇を固めるベースとドラムスもスタイリッシュで、この上なくロマンティックなナンバーに。
この他にも、木漏れ日のような優しさと温もりを感じさせるバラード「Some Other Time」、一音ずつ確かめるようにポツリポツリと弾き始められる内省的な「My Foolish Heart」など心に染みる佳曲の数々が。
しかし、何と無常なことに、このライブから11日後、スコット・ラファロは不慮の交通事故で帰らぬ人となってしまいます。最良のパートナーを失ったビルは、しばらくはピアノが弾けなくなってしうほどのショックを受けます。が、ラファロの追悼盤の1枚として本作のリリースを所属レーベルに提案。
そして名盤『Walts for Debby』は、ビルの代表作として世に知られることになるのです。さらに、このショックを乗り越えて約11ヶ月後に収録された『Moonbeams』では、流麗なピアノ・タッチの中にも、どこか一つひとつの音に深い思いを込めたような重さを感じさせるのですが、それは気のせいでしょうか。
様々な意味で、至高の瞬間をとらえた『Walts for Debby』。時代を超えて聴きたい1枚です。」

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