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『ワダチ』松本零士《講談社コミックス》
『ワダチ』松本零士。講談社コミックス。1976年。
『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』『クイーン・エメラルダス』『戦場まんがシリーズ』等多数の名作SF漫画を手掛けられた故松本零士先生のSF作品です。比較的最近入手しました。
"屋台でアルバイト生計を立てる日本人、山本轍(ワダチ)は、屋台の客として偶然訪れた佐渡酒造と出会い、研究所の作業の手伝いを依頼される。日を追うごとになぜか身近な建造物が取り壊されていき、ついには居住していた大下宿荘まで消滅、海岸での居住を余儀なくされる。サバイバル生活後、他の日本人とともに瀬戸内海の海洋都市へ移住することになったワダチは、佐渡から全日本人を新しい地球へ移住させる計画=カミヨ計画の実態を知らされる。日本人が新天地を得るための佐渡の計画がついに実行され、大型宇宙船を次々と発進させて地球から脱出した日本人は、アメリカの武装宇宙船の追撃を振り切って空間転移による時空ジャンプによって深宇宙空間へと逃げ延び、そこからの長い旅の末、ついに新天地・大地球に到着。新たな惑星での脅威と苦難に満ちた開拓植民者としての生活が始まる。"
この作品は、松本先生のSF作品と『男おいどん』など四畳半ものの中間に位置するようなところがあります。『男おいどん』には最終話が2編ありまして、ひとつは主人公・大山昇太がいずこともなく旅立つ「大いなる四畳半は語らず おいどんは男の旅に出た」(画像2)と、パラレル世界的な「はるかなる第二前世紀 おいどんの地球」(画像3,4)です。
後者では明らかに科学力が進んだ世界ですが、選ばれた日本人による地球脱出計画が秘密裏に進んでいて、おいどん(大山降太)はその脱出要員には選ばれず、そのことを伝えようとした親友や女友達も去り(機密保持のため謀殺や処罰された)、下宿屋大家のバーサンさえも「すべてをアンタに譲る。元気でな」という涙の跡のついた書置きを残して消えたので、おいどんは何が起こっているのかを大体悟ってると思われますが、淡々と誰を怨むことなく生きていく、というエンディングになっています。恐らくは『ワダチ』のストーリーはこの話をリブートしたものだと思います。
『ワダチ』を含む四畳半ものの主人公たちは、心から愛してくれる女性に巡り会うこともなく、裏切られまくりで、共に暮らす女性がいても、とりあえずは一緒にいてあげるけど、いつ他の男に乗り換えていくか分からないという感じなのですが、主人公はそんな女性たちを怨んだり不信になることは無く、淡々と生きていくところが心に染みますね。
#SFコミック #松本零士 #講談社