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角川書店 角川文庫 白蠟仮面
昭和五十六年九月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和28年(1951年)に雑誌「野球少年」に連載された横溝正史の長編小説「白蠟仮面」。
五月半ばの、妙にむしむしする夕方、数寄屋橋付近で怪しげな石膏像を積んだトラックと郵便車が衝突した現場に居合わせた“探偵小僧”の御子柴進少年。その際、現場にダイヤモンドのようなものが落ちていたことから御子柴少年はダイヤ密輸を疑い、トラックを追跡する。やがて、麻布のさびしい大邸宅に着いたトラックは、例の石膏像が入った棺桶のような箱を邸内に運び入れるが、その様子を覗いていた御子柴少年は箱の中からムクムクと、石膏像が起き上がるのを目の当たりにする...
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。御子柴少年がトラックの衝突事故に遭遇する導入部分が「蠟面博士」を彷彿とさせますが、御子柴少年、そして新日報社の敏腕記者、三津木俊助のコンビが今回対峙するのは同じ“蠟”の文字が入っているキャラクターでも、変装術を駆使して自由自在に他人に成りすますことが出来る怪盗“白蠟仮面”。他のいくつかの作品にも登場する、この横溝版“怪人二十面相”とでもいうべき“白蠟仮面”は、“怪獣男爵”と並ぶ横溝ジュヴナイルワールドを代表するキャラクターの一人なのですが...、“まぼろしの怪人”を始め、変装を得意とする怪盗キャラは他にもいるせいか、今一つインパクトに欠ける、というのが正直なところです。本書には表題作の他に「バラの怪盗」「『螢の光』事件」の短編2編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、個人的にはタイトルにも入っている“螢の光”の使い方が絶妙な「『螢の光』事件」が面白かったです。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。
画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 白蠟仮面」です。劇中で「そいつはまるで、顔そのものが白蠟でできているみたいに、自由自在にかわるのである」と描写されている怪盗“白蠟仮面”を中心に、彼が変装する人物や、物語に登場するサーカスのピエロやライオンなどを配した表紙画ですね。どこか悪夢を見せられているような感じの構図が素晴らしいです。
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