角川書店 角川文庫 黄金の指紋

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昭和五十三年十二月二十五日 初版発行
昭和五十四年九月三十日 五版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和26年(1951年)から昭和27年(1952年)にかけて雑誌「少年少女譚海」に連載された「皇帝の燭台」を改題し、昭和28年(1953年)に偕成社から刊行された横溝正史の長編小説「黄金の指紋」。
ある嵐の夜、東京から岡山の伯父の家に遊びに来ていた邦雄少年は、難破船を知らせる半鐘の音で目を覚ました。燈台の灯が消えているのに気づいた邦雄少年は、仲の良い燈台守が心配で燈台へ向かうが、その途中、難破船の遭難者の青年に遭遇する。銃で撃たれて瀕死の青年は、邦雄少年が東京から来ていることを知ると「これを...金田一耕助という人に渡してくれ...」と黒い箱を彼に託す。箱の中にはくっきりと指紋が焼き付けられた、黄金の燭台があった。一人の薄倖の少女の命運を左右するその燭台を巡って、二組の悪党と名探偵・金田一耕助の三つ巴の戦いが始まる...
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。一人の薄倖の少女の命運を左右する黄金の燭台を巡って、ジュヴナイルらしく悪役キャラクターと名探偵・金田一耕助が攻防を繰り広げる訳ですが、今回、金田一が相手にする悪役キャラクターはそれぞれ目的が異なる二組の悪党。一組は燈台守を殺害し、船を転覆させた鐘馗髭とその相棒の黒衣の女。そして、もう一組はご存知、横溝ジュヴナイルワールドを代表する悪役キャラクター、怪獣男爵とその忠実な手下の音丸。この二組が金田一ばかりでなく、互いに騙し騙され、また時には内部からの裏切りがあったりと、悪役側のドラマも描かれていて、そんな三つ巴の戦いには独特の面白さがありました。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 黄金の指紋」です。宝石で出来たブドウの実があしらわれた黄金の燭台を狙う、シルクハットを被った仮面の怪人。ゴリラのような素顔を仮面で隠した、怪獣男爵を描いた表紙画ですね。一人の薄倖の少女の命運を左右する、燭台に焼き付けられた指紋が良いアクセントとなっています。

#横溝正史 #杉本一文 #山村正夫 #金田一耕助 #角川書店 #角川文庫 #ミステリー #ジュヴナイル #小説 #装画

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  • Animals 16

    Jason1208

    2023/12/25 - 編集済み

    頭脳派探偵・金田一耕助が、肉体的にも活躍する意外な作品でした。
    仮面を被せられ、素性が分からないままに監禁されている美少女(玉虫侯爵の孫娘・小夜子令嬢)も、猟奇的なイメージでしたね。

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    • B6cf967ebcafa336fe0b5e970ad6d9c2

      dape_man

      2024/02/04

      ジュヴナイルの金田一はアクティブなんですよね。

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