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角川書店 角川文庫 血蝙蝠
昭和五十六年八月三十一日 初版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和14年(1939年)に雑誌「現代」に掲載された横溝正史の短編小説「血蝙蝠」。
“幽霊屋敷”と噂される鎌倉・扇ヶ谷にある一軒の空き別荘。蝙蝠が多く棲みついていることから、この空き別荘を“蝙蝠屋敷”と呼ぶ若い男女のグループが退屈しのぎにここで肝試しをすることになった。その一番手に選ばれた甲野通代が“蝙蝠屋敷”の目的の部屋にたどり着くと、その砂壁には血で描かれた蝙蝠の絵が、そして、部屋の隅には女の惨殺死体があった。その事件以降、彼女は怪しい佝僂男に付きまとわれるようになり...
“蝙蝠屋敷”で起こった殺人事件、そして、その第1発見者である若い女の殺人未遂事件に挑む名探偵・由利麟太郎と、その相棒の新聞記者・三津木俊助の活躍を描いた戦前の作品ですね。不気味な空き別荘の部屋の砂壁に血で描かれた蝙蝠の絵や、怪しい佝僂男を盛り込んだ、如何にも横溝らしいおどろおどろしさに満ちた物語ですが、せっかくのシチュエーションも僅か30ページでは消化不良の感が否めませんね。本書には表題作の他に「花火から出た話」「物言わぬ鸚鵡の話」「マスコット綺譚」「銀色の舞踏靴」「恋慕猿」「X夫人の肖像」「八百八十番目の護謨の木」「二千六百万年後」の短編8編が併録されています。いずれも戦前に執筆された作品ですが、個人的には横溝正史としては珍しい“科学小説”「二千六百万年後」が興味深かったです。角川文庫には昭和56年(1981年)に収録されました。
画像は昭和56年(1981年)に角川書店より刊行された「角川文庫 血蝙蝠」です。ボロボロに剝げかかった柿色の砂壁に、血で描かれた蝙蝠の絵。まさに“蝙蝠屋敷”の殺人現場となった部屋の砂壁に描かれていた血蝙蝠ですね。血蝙蝠の前を本物の蝙蝠が飛んでいて、その影が砂壁に映っているのが一層不気味さを増しています。
裏面に「悪霊島」「蔵の中」の映画化の告知が入った帯付きです。
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