角川書店 角川文庫 悪魔の家

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昭和五十三年三月五日 初版発行
昭和五十三年五月三十日 三版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和13年(1938年)に雑誌「富士」に連載された横溝正史の短編小説「悪魔の家」。
暦の上ではまだ大寒の最中だというのに生暖かい狭霧が立て込める晩、何かに怯えている様子の若い女と同道することになった新日報社の敏腕記者・三津木俊助は途中、暗闇の中に燐のように浮き上がった首を目撃する。気味の悪い声を出して笑うその首を見て女はいった。「悪魔が 悪魔が」と...
名探偵・由利麟太郎の相棒である新聞記者・三津木俊助が単独で活躍する、戦前の作品ですね。まだ武蔵野の面影を残している頃の西荻窪の、何やら曰くがありそうな家で起きた殺人事件を描いた物語ですが、一種異様な登場人物たちが織りなす不穏な人間模様は読み応えがあり、短い中にも“横溝らしさ”が濃厚に横溢しているのが堪らないです。本書には表題作の他に「広告面の女」「一週間」「薔薇王」「黒衣の人」「嵐の道化師」「湖畔」の短編6編が併録されています。いずれも昭和13年から昭和15年(1940年)にかけて執筆された作品ですが、個人的には名作「鬼火」にも通じる深い味わいがある「湖畔」が良かったです。角川文庫には昭和53年(1978年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 悪魔の家」です。短刀を手にした若い女と悪魔の顔に変化した家。劇中では、悪魔の顔はこのような形では描写されていないのですが、呪われた家そのものを悪魔の顔に見立てた、杉本氏のアレンジが光る表紙画です。

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