角川書店 角川文庫 刺青された男

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昭和五十二年六月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和21年(1946年)に雑誌「ロック」に掲載された横溝正史の短編小説「刺青された男」。
水夫たちの間で、どんな耐え難い灼熱の外洋でも絶対に「シャツを脱がぬ男」がいるという噂が立った。体に傷や腫物があるとも、また、人に見せられない刺青があるともいわれている謎の男。昭和6年、ある貨物船の船内で水夫同士の喧嘩があり、片方の水夫が死んだ。死んだ水夫の津田はゴリラと渾名される粗暴な男であったが、その相手の芳賀がどうやら噂の「シャツを脱がぬ男」らしい。そして芳賀は、いつの間にか船内から姿を消していた...
「本陣殺人事件」や「蝶々殺人事件」と同時期に書かれた短編の傑作ですね。20ページほどの短編ながらも、次々に場面や語り手が変わっていく、凝った構成の作品で、それらが結実するラストが見事。改めて横溝正史のストーリーテリングの巧みさを実感する作品です。本書には表題作の他に「神楽太夫」「靨」「明治の殺人」「蠟の首」「かめれおん」「探偵小説」「花粉」「アトリエの殺人」「女写真師」の短編9編が併録されています。いずれも昭和21年に執筆された作品ですが、横溝正史がノリに乗っている時期だけにどの作品も読み応えがあります。角川文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 刺青された男」です。男装の麗人と大男。「刺青された男」の梨英と芳賀を描いた表紙画ですね。ややインパクトに欠けますが、物語のミステリアスな雰囲気は上手く表現されていると思います。

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