角川書店 角川文庫 憑かれた女

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昭和五十二年六月十日 初版発行
昭和五十三年七月三十日 五版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和8年(1933年)に雑誌「大衆倶楽部」に連載された短編を、戦後中編化した横溝正史の中編小説「憑かれた女」。
可憐な容姿に似合わず、銀座裏の酒場を根城にして荒んだ生活をしている混血児のエマ子。そんな生活が祟ってか、彼女は昼夜問わず不気味な幻覚を見るようになった。そんなある日、正体不明の外人に金で買われたエマ子は怪しい洋館に連れ込まれた。8月だというのに暖炉が焚かれ、そこから強烈な芳香を発している部屋に連れていかれたエマ子は、部屋の浴槽で、幻覚と同じ血塗れになって死んでいる女の死体を見て戦慄する...
混血児の少女が見た幻覚を巡って起こるミステリーに挑む名探偵・由利麟太郎と、その相棒の新聞記者・三津木俊助の活躍を描いた作品ですね。元々“由利先生もの”ではなかった短編を由利先生が解決する形に改稿した作品ということもあって、由利先生が登場するのはかなり終盤になってからですが、彼が解き明かした事件の真相、真犯人の正体は意外なもので、楽しく読めました。本書には表題作の他に「首吊り船」「幽霊騎手」の2編が併録されています。「首吊り船」は“由利先生もの”の短編、「幽霊騎手」は活劇テイストが楽しい“ノンシリーズもの”の中編です。角川文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和53年(1978年)に角川書店より刊行された「角川文庫 憑かれた女」です。巨大な眼玉に見つめられているジーンズ姿の若い女。「憑かれた女」のヒロイン・エマ子と、彼女が見た幻覚を描いた表紙画ですね。巨大な眼玉の、リアルな筆致が圧巻です。

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