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角川書店 角川文庫 幻の女
昭和五十二年三月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和12年(1937年)に雑誌「富士」に連載された横溝正史の中編小説「幻の女」。
数年もの間、サンフランシスコの街を騒然とさせた女殺人鬼・“幻の女(ファントム・ウーマン)”。その正体が日本人で、しかも近頃、日本に舞い戻って来た形跡があるとの情報が入って来た矢先、やはりアメリカ帰りのジャズシンガー・八重樫麗子が日比谷のホテルで、片腕が切り落とされた状態で惨殺されているのが発見された。状況から殺された麗子こそ“幻の女”と思われたが、事件には怪美少女とその手下が絡んでいて、ますます謎が深まってゆく。殺されたのは本当に“幻の女”なのか?そして、暗躍する怪美少女の正体は...?
サンフランシスコと帝都・東京を騒然とさせた稀代の女殺人鬼を巡るミステリーに挑む名探偵・由利麟太郎と、その相棒の新聞記者・三津木俊助の活躍を描いた戦前の作品ですね。この時期の横溝作品らしい、草双紙趣味溢れる講談調の語り口で進む冒険活劇で、様々な思惑を秘めた登場人物たちが繰り広げる独特の世界観が、戦後の“金田一もの”とはまた違った味わいがあって堪りません。本書には表題作の他に「カルメンの死」「猿と死美人」の短編2編が併録されています。個人的には「蝶々殺人事件」の後日譚のような趣がある、“由利先生もの”の「カルメンの死」が面白かったです。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 幻の女」です。唇を歪ませながらこちらを睨みつけている女と、切り落とされた片腕。そして、それらを彩っているかのような夥しい量の血。まさに「幻の女」の世界観を具象化した表紙画です。
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