角川書店 角川文庫 三つ首塔 第1期

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昭和四十七年八月三十日 初版発行
昭和四十九年七月十日 八版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和30年(1955年)に雑誌「小説俱楽部」に連載された横溝正史の長編小説「三つ首塔」。
十三のときに両親を相次いで亡くすも某私立大学の文学部長で英文学者の伯父の家に引き取られ、幸せな日々を送っていた宮本音禰。そんな彼女に、大富豪・佐竹玄蔵老人が築いた百億にものぼる財産を相続するという話が舞い込んできた。しかし、それには高頭俊作なる見も知らぬ男との婚姻の条件が付されていた。思いもよらない事態に戸惑う音禰であったが、やがて彼女の周囲で、相続を巡って次々と殺人事件が起こる...
巨額の財産の相続人に選ばれた宮本音禰と彼女の前に現れた謎の男・高頭五郎の愛憎模様、そして相続を巡って起こる連続殺人を彼女の手記という形式で描いた、横溝正史の異色作ですね。名探偵・金田一耕助が登場する作品ですが、前述の通りヒロイン・宮本音禰の視点で物語が進行する手法が採られていることもあって、本格探偵小説というより、揺れる女心を主軸とした、ミステリー仕立てのメロドラマといった趣があります。それ故に好き嫌いが分かれる作品ですが、相続を巡り蠢く胡乱な人間たちの人物造形が面白く、個人的には楽しく読めました。角川文庫には昭和47年(1972年)に収録されました。
画像は昭和49年(1974年)に角川書店より刊行された「角川文庫 三つ首塔 第1期」です。黒枠・白背景というのはそれまでの初期表紙画と同じスタイルですが、古い木箱に押し込まれた裸婦の死体が描かれたこの表紙画ではアート色が弱まり、のちの杉本表紙画の作風を彷彿させる、退廃的で背徳的な雰囲気がストレートに表現されているのが特徴です。

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