Phaedra / Tangerine Dream

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1974年2月20日、Tangerine Dream のヴァージンレーベルからの初アルバム Phaedra がリリースされた。
この作品が画期的なのは単にシンセサイザーを用いただけではなく、シーケンサーを始めとしてMoog Modular System を世界で初めて全面的に使用し、後のelectronic music の礎を築いた点だ。因みにここで使用されている Moog Modular は、レーベルからの協力を得て Christopher Franke がPopol Vuh のFlorian Fricke から借り受け、後に Klaus Schulze に売却された、あの Moog Modular である。
とにかく当時はまだ前例の非常に少ない“機械”だった事もありレコーディングはカオス状態だったのは想像に難く無く、2019年に発表されたボックスセット In search of Hades に収録されたアウトテイク集を聴くと、その混乱ぶりを窺い知る事ができると同時に、インプロヴィゼーションでよくぞこれだけの音源を作製できたものだと感じる。いや、インプロだったからこそ可能だったのかも知れない。
またEdgar の自伝 Force Majeure では、1973年11月から行われた Oxfordshire の Manor Studio でのレコーディングは、電力不足による停電や機械の発熱によるチューニング変化、過大なベーストーンによるスピーカー故障など度重なる多くの災難に見舞われながらも、試行錯誤を繰り返した苦労が記されていた。
1974年といえば、ピンクフロイドは「狂気」、ELPは「恐怖の頭脳改革」を既に発表していてシンセサイザーの音自体は珍しくはなかったが、Moog Sequencer はまだ誰も本格的に取り入れていなかった時代だ。それだけにどうすればどんな音が出るのか、まさにゼロから音を作っていく、そんな所からスタートしたレコーディングだったようだ。
まだ誰も聞いた事がない音を作る。これも当時の彼らの魅力のひとつだった。

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