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Trilobite
ギニア共和国といえば、タレントのオスマンサンコン以外にイメージが沸かないのです(私の場合)。早速、図案を見てみると、何時もの「化石と貝」なのが分かります。右の三葉虫の原案は、下側にうっすらと見える化石からイメージ図を描いているのが分かります。果たして何の種類だろうと考えていましたが、答えが出ませんでした。イメージ図には尾部の縁でない場所から髭の様な一対の棘があり、頭部は触覚と思われます。隣の切手は、大シャコガイ(Tridacna gigas)と記載がありますが、ギニアが面する大西洋には生息していないらしいです。シートの上部にも様々な海生生物がいますが、バージェスのMarrella以外は、現生と思われます。また何故、海生生物に統一せずに灯台(南アフリカ、ケープタウン)が紛れ込んでいる意図が分かりませんでした。
Republic of Guinea Trilobite 2005 -Trilobites
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Paraceraurus exsul
近年は、三葉虫切手乱発国となったアフリカのトーゴ。以前から図案選びに統一性が無いことは分かっていましたが、今回も化石という大きな括りだけで時代も産地も分類も統一性が無い図案の採用がされています。オルドビス紀ロシアのParaceraurusが中心ですが、この種はコレクターも認める美しい種類、左側はなぜかシダ植物、この二つに化石以外の共通性がいくら考えても想像できませんでした。タブ部にもモロッコのレドリキアと硬骨魚類の状態の素晴らしい化石が採用されています。年を追う毎に額面の数字が増えていてインフレが速いペースで進んでいる事も気になります。
Republic of Togo Paraceraurus exsul Nov.5.2019 -Trilobites
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Morocops ovatus
右下が三葉虫図案ですが、まず学名が「Elrathia kingii」となっています。カンブリア紀アメリカ、ユタ州産の世界で最も入手しやすい三葉虫ですので、アフリカのこの辺りでは三葉虫の事を「Elrathia kingii」とでも呼んでいるのかと勘違いしそうです。何か見覚えがある化石と思ったら、トーゴで発行された切手でも向きは逆ですが同じ版が登場していました。エージェントが間違ったキャプションを審査せずに採用しているのだと思います。ジュラ紀ドイツ産のDactyliocerasやセイヨウホラガイは合っていますが、カットアンモナイトは、単にアンモナイトと雑な仕上がりです。図案の雰囲気だけを重視した切手なんだと思います。 左上:Dactylioceras commune et les ammonites 右上:Charonia variegata(セイヨウホラカイ) 左下:Les ammonites 右下:Elrathia kingii(Morocops ovatus)
Central African Republic Elrathia kingii(Morocops ovatus) 2019 -Trilobites
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Walliserops trifurcatus
Walliserops trifurcatusは、モロッコ産のデボン紀の三葉虫としてはトップクラスに面白い形態をしており、人気もある種類ですから、図案として採用されても可笑しくはありません。ただ、貝≒化石なアフリカ諸国ですので、強引に貝を捻じ込んできます。フランスが旧宗主国の中央アフリカなので、題字に「Les coquillages et les fossiles(貝と化石)」とあり、俯瞰で見ると主役は貝となっております。Walliserops trifurcatusにしても1990年代の剖出と思われる標本が採用されており、2019年にもなって、もう少し良い標本が幾らでもある筈なのに、これ程古い標本を図案に採用するか謎があります。
Central African Republic Walliserops trifurcatus 2019 -Trilobites
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Triplagnostus/Lyriaspis
イギリスが主張する南極領では、事実上、使用ができない切手が発行されています。領有権の問題はさて置き、南極エリアでも三葉虫は産出すると見て良いです。カンブリア紀、現在の南極大陸はゴンドワナの一部を形成し、赤道付近にあったとされています。ここに登場する種類も実際に南極で報告されている種類と見て良いと思います。Agnostida(目)のTriplagnostus、Ptychopariida(目)のLyriaspisが登場していますが、オーストラリアで産出するLyriaspisが登場するという事は、オーストラリアにやはり近いとみて良いでしょう。南極産の三葉虫など市場に出てくることが無く、何時の日か収集できる日は訪れるのでしょうか。 ※本当は15枚で構成されるシリーズなのですが、画像が8枚しか掲載できないため、三葉虫のみの2枚の紹介としました。
British Antarctic Territory(UK) Triplagnostus/Lyriaspis Apr.2.1990 -Trilobites
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Trilobite
アフリカといえば「化石=貝」という考えがあることが何となく分かってきましたが、「化石=火山」という例も幾つか見られます。貝よりは地質的には近いのでまだ説得性はありますが、それでも違和感は拭えません。図案に目を移してみると火山に関しては、特定の実在する活火山よりイラスト化されています。キラウエア火山は日本でも有名ですが、アラスカのオーガスティン火山も景観も活動も派手な火山として知られます。化石の代表としてアンモナイトと三葉虫がそれぞれ登場しますが、これらは特定の種類から得られた図案ではないように見えます。オレノイデス辺りが近いのかもしれませんが、種類を特定する要素は無くなっております。 左端:Volcan Kilauea,Hawai(キラウエア火山/1,247m米国ハワイ州) 左2:Ammonoidea(アンモナイト) 右2:Volcan Augustine,Alaska(オーガスティン火山/1,260m米国アラスカ州) 右端:Trilobitomorpha(三葉虫)
Republic of Togo Trilobite 2013 -Trilobites
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Dicranurus monstrosus/Morocops ovatus
西アフリカのガーナの東側に位置する小さな国です。切手乱発国の一つとあって2019年の発行とは思えない残念な小型シートです。左上と右上が三葉虫ですが、左上は、モロッコのDicranurus monstrosusと分かります。標本の質も悪くエアツールで削り出したかなり古い標本が採用されています。更によく見ると「Dicranurus elegantus」とあります。北米オクラホマのDicranurus hamatus elegantusと間違えたのでしょうか?モロッコ産は昔からDicranurus monstrosusと言われてきましたので、間違えるにしても中途半端です。右上に目を移すと同じくモロッコのMorocops ovatusが登場しますが、「Elrathia kingii」と記載されています。三葉虫の代名詞の種類とは言え、間違えようの無い誤植です。普通は一寸検索すれば素人でも気が付くレベルだと思うのですが、酷いものです。下側の2つは間違っていませんでしたが、コンセプトが化石という大きな括り以外は繋がりがなさそうです。 左上:Dicranurus monstrosus(Dicranurus elegantus) 右上:Morocops ovatus(Elrathia kingii) 左下:Velociraptor mongoliensis(白亜紀/獣脚類/アジア) 右下:Mioplosus labracoides(始新世/硬骨魚類/北米)
Republic of Togo Dicranurus monstrosus/Morocops ovatus Feb.25.2019 -Trilobites
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Trilobite
1982年(5/1〜10/31)にテネシー州ノックスビル市で開かれた「ノックスビル国際博覧会(Knoxcille World's Fair)」の記念切手です。「エネルギーは世界の原動力」をテーマに日本を含む16カ国が参加し、1,113万人が訪れたそうです。当時の資料を見てみると世界各国のパビリオンが林立し、テーマが絞られた万国博覧会といった内容であります。化石燃料に代わる新たなエネルギー源を実用化していくことが求められた1980年代。人々のエネルギーに関する関心は今以上に高かったと思われます。図案に目を移すと4つのテーマでイメージをデザイン化しています。三葉虫は、「化石燃料」の一つとして登場しています。一緒に描かれているのはシダ植物でしょうか、地下資源であることが一目でわかります。化石燃料は、石炭や天然ガスを含む広義な意味が含まれており、三葉虫は動物由来の化石という意味で描かれたものと想像できます。種類や分類については、特定の種類をモチーフにしたものではありませんが、一目で三葉虫と分かる様にシンプルにデフォルメされています。 左上:Solar energy(太陽光エネルギー) 右上:Synthetic fuels(合成燃料) 左下:Breeder reactor(増殖炉) 右下:Fossil fuels(化石燃料) 【外部サイト】expomuseum.com http://expomuseum.com/1982/
United States of America Trilobite Apr.29.1882 -Trilobites
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Trilobite
今は形だけは政府ができていますが、内戦と飢饉で一向に先の見えない状況下のソマリア。この切手が発行された1997年は、状況が非常に悪く、内戦で無政府状態となり、米軍や国連PKOまで撤退して数年たち、更に混沌とした戦時下でした。政府が無いので郵政は制度として成り立っていない時期でしたから、この切手は海外のエージェントが勝手に権利だけを行使して発行された切手(切手とは言えない紙切れ)と思われます。調べきれませんが、「I.P.Z.S. ROMA」なる記号が、これを暗示しています。図案に目を移してみますと、レドリキア目とプティコパリア目を足して2で割ったようなイラストです。特定の何かの種ではなく、イラストレーターの創作と思われます。他の切手の化石の図案も同様に描かれておりますし、一様に「FOSSILS(化石)」とあり、悪意のある図案ではないと感じます。 200sh.so/Fish 500sh.so/Feather star 3000sh.so/Leaf
Somalia Trilobite May5.1997 -Trilobites
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Myopsolenites boutiouiti
太平洋のメラネシア地域にある島国が発行していますが、題材の化石とは国としては何れも関連はありません。全て実物化石の写真から図案化されていますが、これらも特に繋がりは感じられません。三葉虫は、カンブリア紀モロッコ産のMyopsolenites boutiouiti(Resseropsという属名でも見かける)で、10㎝を超える大きめの種類です。補修の無い良い個体を探しているうちに時間が経ってしまい私もまだ入手できていないのですが、特徴的な姿で供給が少ないので何時入手できるでしょうか。この種類状態が良いと背軸にも棘列があり、カンブリア紀の平坦な種類が多い中で実は立体的な種類だったりします。小型恐竜とアンモナイトの種類を特定しようとしていましたが、はやり専門外のため挫折してしまいました。 左上:Shrimp fossil(Drobna deformis/ジュラ紀ドイツ) 左下:Trilobite fossil(Myopsolenites boutiouiti/カンブリア紀モロッコ) 右上:Dinosaur fossil(?) 右下:Ammonite fossil(?)
Solomon Islands Myopsolenites boutiouiti 2014 -Trilobites
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Dicranurus monstrosus
西アフリカ、大西洋に浮かぶサントメ・プリンシペは、1,000km2に満たない小さな国土の島国です。この小型シートは、「世界の火山」シリーズらしいのですが、火山については、この国が火山島なので身近なのかもしれませんが、なぜ三葉虫も一緒に登場するかは不明です。切手の図案は、背景にキリマンジャロ山(5,895m/タンザニア)にDicranurus monstrosusが一緒に図案化されています。もう少し状態の良いDicranurusなど幾らでも出てきそうですが、2019年発行なのに何故か古い標本を採用しています。どちらもアフリカを代表する火山と化石(モロッコ)という事で、ここまでは何とか納得するのですが、シートのタブ部の図案にも同じく火山と三葉虫が登場していて、調べてみるとポポカテペトル山(5,426m/メキシコ)とColpocoryphe grandisとあります。聞きなれない学名ですが、Diacalymene ouzreguiが検索すると引き当たりますが、写真はどうみてもPhacopsです。状態も決して良いとはいえず、どの産地の標本かも分かりませんが、メキシコ産ではないと思います。見れば見るほど疑問点が出てくるアフリカ諸国の切手の紹介でした。
Democratic Republic of Sao Tome and Principe Dicranurus monstrosus Oct.22.2019 -Trilobites
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Redlichia chinensis/Ptychoparia coreanica
Redlichia chinensisといえば、古くは中国産Redlichiaの総称的な意味合いがあると思っているのですが、朝鮮半島でもカンブリア紀の地層があり、近似種が産出したと思われます。図案を見ると中国産の種類とは別物のように見えてしまいますが、自在頬を欠損しているのでイメージが異なるだけかと思います。もう一つのPtychoparia coreanicaも情報が乏しく、現物の写真は[Trilobiten weltweit]にも掲載されていませんが、同本の92pをみると産出地が記載されているので、朝鮮半島で産出する三葉虫で間違いなさそうです。とても地味な種類の2つですが、明らかにカンブリア紀を代表する種類が朝鮮半島で産出していたことが分かります。
Democratic People's Republic of Korea Redlichia chinensis/Ptychoparia coreanica July5.1997 -Trilobites
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Crotalocephalus gibbus
Kainops inviusとされていますが、三葉虫の知識が少しでもある人が見れば、明らかにCrotalocephalus gibbusです。デボン紀のファコプス目くらいは共通ですが、見た目が明らかに異なり産地も遠く離れたアメリカ、オクラホマ産がKainops inviusなので、誤植もいいとこです。ここまで間違えていると図案の中の2つの貝も心配になります。左下のPseudovertagus alucoと左側のホラ貝Cymatium aquatileは、図案と実物は間違っていませんでしたが、絶滅種ではなく化石でもないインド洋や日本近海にも棲息する現生種と分かりました。サハラ砂漠の内陸国には縁の無さそうな貝類とサハラ砂漠とはいえモロッコとは違い三葉虫の産出する可能性は低い古生代の化石が同じ図案に収まる不自然さから、誤植の意味を何となく察することができます。小型シート切手外の図案は、全体のメインぽいのに明らかに手抜き感のある仕上りのArchaeopteryx lithographica(始祖鳥)、Archaeopteryx lithographica(現生のホタテ)、Costoanachis sertularium(現生の巻貝)。西アフリカ内陸国の方では、化石≒貝くらいの認識なのかもしれません。
Republic of Niger Crotalocephalus gibbus 2019 -Trilobites
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Asaphus expansus
題名の「Conchas e fossels」とは、ポルトガル語で「貝と化石」。アフリカ圏では現生の貝と、絶滅生物の化石を同一視しているのは、北西部や中央の旧フランス植民地帝国圏だけの文化かと思いきやエリア的に遠く離れたアフリカ東南部でも同じ感じなのでしょうか。Turritella terebra(キリダイダマシ/腹足綱/インド洋太平洋)は、現生種であります。どちらも産地も生息地も意味のあるものに思えないので、Asaphus expansusに関しても同様かと思います。ロシア産のやや古い産出の化石と思われます。近年は、A.expansusも更に細分化されていますが、写真から区別は難しいです。 (タブ) Tyrannosaurus rex(獣脚亜目/ジュラ紀/アメリカ) Ataxioceras conditum(アンモナイト亜綱/ジュラ紀/ドイツ) 左2:Aeger tipularius(甲殻上綱/ジュラ紀/ドイツ)/Tutufa oyamai(チリメンナルトボラ/腹足綱/太平洋日本近海) 右上:Seymouria baylorensis(両生網/ペルム紀/アメリカ)/Tibia martini(ワタナベボラ/腹足綱/太平洋日本近海) 右下:Archaeopteryx lithographica(古鳥類/ジュラ紀/ドイツ)/Cypraea tigris(ホシダカラ/腹足綱/太平洋インド洋)
Republic of Mozambique Asaphus expansus 2019 -Trilobites
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Phacops sp.
モーリタニアといえば、日本ではスーパーマーケットの鮮魚コーナーに並ぶタコ位しか接点がありませんが、エリア的には化石王国のモロッコに近接し、サハラ砂漠の大西洋側一角にあります。地質的な資料が無く分かりませんが、開発が進めば三葉虫も産出しても、おかしくないエリアとは思います。図案からPhacopsであることは分かりますが、複眼が曖昧に描かれているため、種類の特定は困難です。エンロール姿勢をサイドから描いてあるのは、中々センスがよい図案とは思います。学名はありませんが、「coquillage fossile」とあり、coquillageはフランス語で貝なので、単に「貝の化石」ということでしょうか。2枚組のもう一つの図案は貝そのもので、同じキャプションということは三葉虫と記載すべきを間違えた可能性は否定できません。それか三葉虫に馴染みが無く、貝と同類と本当に思ったかでしょうか。
Islamic Republic of Mauritania Phacops sp. 1972 -Trilobites