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Acanthopyge sp.
今や幻種となっている存在感のあるAcanthopyge haueriと同型の新種が発見され、市場に出てきたのが2010年頃でした。mdl-storeのブログでは、新産地Boulachghaleとされる地の近郊とされていますが、広域で地名が無い土地のようで、以前のA.haueriが産出したMrakibとは産出場所は違うけど、エリアとしてはMrakib近郊との事で、詳細な産地地図も提供頂きました。ただ、こちらで公開は控えますので、mdl-storeのブログ通りの情報で正しいようです。A.haueriと比較すると華奢で尾部の尾板が小さく、尾部の長い棘は熊手の様に下に伸びているのが特徴です。その棘を含め無数の粗い棘が疎らに存在しており、Hammi氏の剖出により、それらが温存されています。新産地でも完全体自体が極めて少数であり、その中で頬棘が残る個体は数えるほどしか存在していないと言われており、新種も幻種となる思われます。 (2024.3産地情報の記述を更新しました)
Middle Devonian Lichidae,Lichioidea,Lichida TRI-755 -Trilobites
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Lepidoproetus lahceni
特徴的な大き目の吻と幅広体形で、この仲間としては大き目の体。長い頬棘も太くしっかりした物で体の大きさからは明らかに比率が大きいです。またProetidae(科)では珍しく背軸の棘を持ちます。ただPhaetonellusの様に全ての節にあるのではなく、後半の4つ程度に留まります。この種類は、Rken Tafraout産でも産出するようです。
Lower Devonian Proetidae,Proetoidea,Proetina,Proetida TRI-548 ‐Trilobites
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Parabathycheilus gallicus
小さいが故に目立たないだけで、本種は実に独創的でユニークな姿をしています。緩く巻いた太目の頬棘は、尾板より長く伸びているとはいえ、ここまでは普通です。特徴的なのは、頬に当たる部分が大きく膨らみ、その上に大き目の眼が飛び出ているのです。近縁のケイルルス亜目エンクリヌルスなどに見られる特徴ですが、こちらはカリメネ亜目になります。もう少し大きければ結構奇抜な種類として人気を集めたかもしれません。
Lower Ordovician Bathycheilidae,Calymenoidea,Calymenina,Phacopida TRI-422 FezouataTrilobites
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Scabriscutellum sp.
背中に棘のあるScabriscutellumが登場しだしたのは、1990年代後半だったと記憶しています。デボン紀モロッコ産は、既に様々な棘々種が登場していましたが、サンドブラストを用いた革新的な剖出技術の向上により、より繊細な体表面の凹凸を飛ばす事なく残す事が出来た要因が大きいと感じます。それまでは、棘があるなんて全く想像もしていなかったScabriscutellumに新たな姿があったとは驚きを得ると共に、更にモロッコ産三葉虫の多様性と保存の良好さに魅了されて行くのでした。本標本も保存が良い個体に見られる尾板縁のギザギザが確認できます。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-721-2 -Trilobites
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Scabriscutellum sp.
尾部を改札鋏で切り込みを入れた様に切り取られています。しかし、その後も生き抜いたのでしょう、縁取りは丸く滑らかになっています。脱皮直後に別の生き物に捕食されかけたと思われますが、相手が何物だったのか今となっては不明です。尾部の切り取られた場所の近くの尾部の中心付近も歪みが生じています。このScutellumは、胸部に一つずつ垂直方向の棘が並ぶ種類です。棘のあるScutellumは市場に登場して暫く経ちますが、まだ正式な学名が確認できません。
Middle Devonian Styginidae,Illaenoidea,Illaenina,Corynexochida TRI-518-2 -Trilobites
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Quadrops flexuosa
以前には、Philonyx philonyx(RICHTER&RICHTER1952)と呼ばれていましたが、現在ではQuadrops flexuosaと呼ばれています。モロッコのデボン紀の代表的な棘棘三葉虫で、その中でも異彩を放っており、4つに分れた謎の吻、平安装束の冠のような大きなヘラ状の棘(この種類は、それ程大きくないので、新種かもしれません)、肋や尾板から曲線を描いた棘、縦に3列の体節の棘など数えきれないほどの特徴的な棘で武装しています。左後の側葉部は、生前に欠損したのか一部棘が残されていません。従来から見かけるモロッコの代表的な棘々種でしたが、近年は原石が枯渇していて、現代の技術で剖出した標本は本当に貴重です。
Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-139 -Trilobites
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Akantharges mbareki
Akanthargesという三葉虫を始めて目にしたのは、Jorf産が出回り始めてしばらくした2011年終り頃だったと記憶しています。今までの三葉虫とは一線を画す厳つい姿、モロッコ産に想像もしていなかった造形があったのに驚きを覚えました。更にHammi氏の標本は世界に数個しかない頃、車でも買えそうな価格にも二度驚愕したのを覚えています。まるでイラガの幼虫のような棘とイボの装飾は、毒でも持っていそうな位に不気味な姿だと思います。2013年に2種類あるAkanthargesは、この標本のAkantharges mbarekiとやや平滑な種類のBasseiarges mellishae(Corbacho&López-Soriano2013)とに記載されています。
Lower Devonian Lichidae,Lichidae,Lichida TRI-443 -Trilobites
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Morocops spinifer
Assaの"Bumpy phacops"の中では、最も粒々の度合いが高く、特に頭部の粒々は気持ち悪い位に密集しています。2012年位に突如登場した時には、Phacopsがこの様な姿で登場するとは想定しておらず、衝撃的でした。クリーニングも相当集中が必要とのことで、本標本では2体あるとはいえ名手Hammi氏でも述べ30時間かけてクリーニングしたそうです。また比較的柔らかい石質のため、欠けやすく通常のクリーニングより困難を極めることが分かります。本種だけは黄土色の母岩が特徴のため、他の"Bumpy phacops"とは産出エリアが異なると思われます。
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-450-2 KhebchiaTrilobites
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Eoharpes sp.
巷にあるモロッコ産Eoharpesは、オルドビス期とされるものが優勢に思いますが、石質や産地のMarakibなど考慮していくとデボン期で合ってる様です。EoharpesはHarpetida(目)の中では希少なタイプであり、丸く膨らんだ鰐の形状も、細かく見ていくと幾つかのタイプがあります。産状は鍔(頭部)の部分だけである事が圧倒的に多い産状です。特徴の鰐の小孔は、貫通はしておらず、何か生活するのに役立っていたのか不明であります。因みにEoharpesという属名は通称で呼ばれていて、正式には何も記載されていません。
Lower Devonian Harpetidae,Harpetioidea,Harpida TRI-387 -Trilobites
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Koneprusia dahmani
全身が細かい棘で覆われた驚異的なKoneprusiaです。如何にも古生物という独特の存在感があり、モロッコ棘々種でも上位の人気種です。Hammi氏の作品ではErbenochile erbeniの次に欲しかった一品であり、本種をHammi氏の作品で得たいというコレクターとしての願望が叶いました。大きさも質も文句なし、このレベルで剖出できる技術は現在の所、彼の右に出る者はいないでしょう。化石で見ると絶賛なのですが、この様な生物が家の中を這っていたら三葉虫コレクターの私でも叩き潰すかもしれません。
Lower Devonian(Emsian) Odontopleuridae,Lichida TRI-704 TimrhanrhartTrilobites
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Comura bultyncki
モロッコのデボン紀を代表するド派手な棘々種です。こんなに棘が生えていると生活するにも不便だった気がします。中央列の棘列は、硬いのになだらかに後方に靡いているのは、前進する時に水の抵抗を抑えるためだったのでしょうか。この種をクリーニングするには、技術も時間もかなりの労力を要すると思います。
Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-74 -Trilobites
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Lanceaspis hammondi
2013年位に突如出現し、世界のコレクターに衝撃を与えた新種です。産地は一瞬で枯渇し、完全体のレベルの高い標本は、本標本を入れて世界に数個しかないと言われます。僅かに産出した個体の多くも部分化石であり、一時期コンポジット個体まで高額で取引されていました。モロッコ産は絶産と言われても待てば、その後に少し離れたエリアから産出するパターンもあるのですが、本種はピタッと出てきません。頭部の吻ばかりが注目されますが、尾部も特徴的です。
Lower Devonian Acastidae,Acastoidea,Phacopina,Phacopida TRI-614 -Trilobites
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Cyphaspis walteri
頭部のV字型の二本の角から「Devil's Horn(悪魔の角)」という愛称で呼ばれている種類です。触覚の様に見えますが棘です。この棘が如何なる機能を有していたのかは、謎であります。この種類、群れで暮らしていたのか、まとまって見つかることも多いです。近年モロッコのCyphaspisは、多くの種類が見られるようになりましたが、この種類は誰でも見分けることが可能です。一般受けする種類でもあるので、市場を見ていると贋物も非常に多く見られ注意が必要です。 【標本リンク】FFストア http://www.ffstore.net/detail/dev_010.html
Devonian Aulacopleuridae,Aulacopleuridea,Proetida TRI-297 -Trilobites
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Morocops sp.
三葉虫の色に関しては、化石化してしまうと生前の色が保存されませんので、推測の域でしかありませんでした。化石の色は、鉱物置換などで生前の色が保存されている訳ではありません。モロッコのHamar Laghdadの極限定された地域から産出する赤い三葉虫を研究した報告が興味深く、この謎を解く一つの例と考えられます。この産地から赤い体色と緑の複眼をもった三葉虫が産出されます。チューリッヒ大学の研究によればX線分光分析により解析した結果、生前の組成が一部保たれているとの結果が出たそうです。三葉虫というのは、イセエビのような色をしていた可能性があるという事です。 【参考サイト】BioOne https://bioone.org/journals/acta-palaeontologica-polonica/volume-54/issue-1/app.2009.0112/Red-Devonian-Trilobites-with-Green-Eyes-from-Morocco-and-the/10.4202/app.2009.0112.full
Lower Devonian Phacopidae,Phacopoidea,Phacopina,Phacopida TRI-477 Hamar LaghdadTrilobites
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Onnia superba
Trinucleoidea(超科)の中では、最も立体的で保存状態の良い標本が産出するモロッコ産の代表種です。鰐に大きめの孔が規則正しく並び、後頭部から鋭く短い棘が後ろにあるのが特徴です。群れで暮らしていたのか、10体以上の個体の群衆の標本が以前は良く出回っていて、それらは人気があり非常に高額で取引されていましたが、近年は見かけなくなりました。
Upper Ordovician Trinucleidae,Trinucleoidea,Asaphida TRI-73 KtaouaTrilobites