『100年後の君を今と変わらず愛している!(by武田鉄矢)』 Hellstern & Sons ビスポークローファー
BSフジで現在放送中の『101回目のプロポーズ』。「僕は死にましぇん!」と共に「50年後の君を今と変わらず愛している!」という武田鉄矢のセリフがあります。1年先のこともわからない私にはこのように言い切るのは難しいですが、100年という年月は一人の人間には大変長いものです。 漆器では100年経過したものはさほど珍しくはありません。ただ靴に関しては100年前のものが美しい状態で見られることはほとんどないと思われます。珍しいことですが、製作から100年ほど経過した靴が私の手元にあります。それが下の靴です。 パンチドキャップトゥのローファーです。タンが大変長く、デザインも独特でデコラティブな印象があります。エドワーディアン時代の靴といった感じです。 側面から見るとコバがほどんど見えません。 パンチングの穴は大変小さく作られており、華奢な印象です。 僅かにスクエァに作られたトゥ。カーフは薄いのですが、特に乾燥した感じもなく良好なコンディションを維持しています。 ヒールカップもとても小さいです。 タン部分が直接縫い付けになっている珍しい作りです。 拡大画像でもカーフの質の良さが伝わってきます。ステッチも大変細かいです。 タン部分のサイドの縫い付けが、羽根のような形状になっているのが面白いです。 ソールは極めて薄く作られており、とても軽い靴です。 これは内側を見た画像です。甲前半部が大変に薄いですね。 インソックです。Hellstern & Sonsは1870年にパリ・ヴァンドームに創業したビスポークメゾンです。1925年にロンドンに支店を出しました。1925年以降、靴のインソックには上の画像のように『ロンドン』の文字がスタンプされますので、この靴の製作は1925年以前ということになります。ロイヤルワラントが二つ見えます。どこの王室でしょうか? アウトソールの革もしっとりしていて、オークバークを使ったものと思われます。。 ハンドウェルトの凹凸が見られます。ライニングは茶色に着色された薄手のものです。 この靴のブナ製のシューツリーも精巧で素晴らしいです。 中をくりぬいて軽量にしており、まさに工芸品です。 例に漏れず私は実際に履いていますが、走り回れる雰囲気はありません(笑)。 1925年以前の製作 HELLRTERN & SONS ビスポークローファー https://muuseo.com/shinshin3/items/431 グリーン参る こちらはロンドン支店が出来てからの同社の靴です。私のローファーと違い、ダブルソールの男性的なダービーです。 1910年頃のヴァンドーム店の前で撮影された写真です。左隣には、今も私の大好きな「セルッティ」のお店が見えます。恐らくこの靴も写真の時代に作られたものだと思いますが、この写真の中の女性はもうこの世に誰もいないと思うと、何だか切ない気持ちになります。