after last supper

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吉田卓矢は布のカンヴァスに油絵具で絵を描くという約500年前から続くアカデミックなで技法で絵画制作を行っています。近年の作品はリッラクスした様子の人体や黄色い空、画面いっぱいに広がる植物などが描かれており、それらのモティーフは一見何気ない日常を切りとったようにも見えますが、現実離れした色彩のメリハリは見るものを異世界へと引き込む強さがあります。また、画面上に垂直線や水平線、対角線を彷彿させるためのモティーフ配は
堅固な構図として画面を支え、吉田ならではの素朴なモティーフとの調和が見る者に安心感を与えています。
吉田は緑豊かな蘭越町に移住したことをきっかけに2つの作品スタイルを確立しました。

プレインエアと呼ばれる戸外制作での風景画と、プレインエアで得た形象と画家の想像を融合させた室内制作画です。蘭越町の豊かな自然を身体全身で感受し、その一瞬を捉えキャンバス上で再構成することは画家の作品に大きな影響を与えました。「屋外で描く油絵や水彩画は、その場所が持つ雰囲気やエネルギーを凝縮させて、キャンバスや紙の上に色彩の電流が流れるようなイメージで描いています。なぜなら自然界の大地、空、草花の間には見えない色彩の電流を感じるからです。それは、この世界は太陽が照して見えている世界だけではなく目には見えない光と影の存在を想像させられます。春、夏、秋、冬、外に出て、見えないものを捉えるために絵を描いています。」

作中で見られる吉田独自の色彩感覚と構図は自然物を模倣し学び得たものと言って過言ではないでしょう。
アトリエでの制作ではパラダイスのような世界観が絵画に現れるようになりました。実在する風景に、あり得ない動物や空想の生き物を共存化させることで現実味を帯びた楽園が絵画から享受できます。吉田はこう言います。「アトリエで描くイマジネーションの絵画の中に、動物と裸の人体を共に描くことがあります。それは人間が自分自身を全てさらけ出した本来の姿で自然と調和して生きていけるようにという想いを込めています。現代社会では人々が傷つけ合い、人類が自然を必要以上に壊しています。だから私は地上の楽園を想像し、そんな世界がいつか必ずやって来て欲しいと願い、日々仕事に取り組んでいます。」

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