虫について
初版 2023/10/15 19:06
改訂 2023/10/22 09:24
電車に乗っていてふと気がつくと、窓ガラスにカメムシが這っている。
それを見ながら、ある種の三葉虫にフォルムが似ているな、と思った。
ある種の三葉虫、それは私がとくに好きなキベレという名の三葉虫だが、おそらく一般の人々の目にはカメムシもキベレも同じようなものとして認識されているんだろう。
なるほどこれでは三葉虫の人気が一定以上に高くならないのも無理はないと思った。
三葉虫界でもっとも愛らしいもののひとつといわれるキベレがカメムシとそのフォルムにおいて大差ないのであってみれば!
じつのところ、私もカメムシはあまり好きでない。
カメムシばかりでなく、昆虫一般が苦手なのだ。
子供のころはそうではなかった。
カブトムシやクワガタを飼っていたこともある。
もちろん触るのもOKだったが、大人になってからそうではなくなった。
ある日甥がクワガタをもって家に遊びにきたとき、それに触れなくなっている自分を発見したのである。
なんかもう、嫌悪感ばかりが先立っているのだ。
ネットで調べてみると、大人になってから虫が苦手になる人は少なくないらしい。
その理由もいろいろ書いてあるが、どうもイマイチ説得力に欠ける。
それ以上に驚いたのは、虫嫌いの人が予想以上に多そうなことだ。
あの愛らしいテントウムシを見てさえ虫酸が走るというのだから相当なものだ。
そういう重度の虫嫌いには、三葉虫だって「虫」の一種というので、嫌悪の対象になるのも無理はないと思うのである。
Trilobite を三葉虫と訳したのは名訳だが、この「虫」の字がよくないんじゃないか、と思うこともある。
文字通り「三葉石」としていたらどうだったろうか。
そんなこといまさら考えてもしかたないが、この虫という字も本来的には多義であり、およそ生き物すべてを「虫」であらわすことも可能なのだ。
例を挙げれば、「羽虫(うちゅう)」で鳥一般、「毛虫(もうちゅう)」で獣一般、「鱗虫(りんちゅう)」で魚一般、「裸虫(らちゅう)」で人間一般(!)など。
とはいうものの、それは文字の国である中国での話で、日本では残念ながら「羽虫」といえば「はむし」を、「毛虫」といえば「けむし」を、「裸虫」はなじみがないが、おそらくたいていの人は「いもむし」を連想するのではないか。
三葉虫だってどうしても「むし」のイメージから自由にはなれない。
まあ、私のように三葉虫は好き、虫は嫌いという人間もいるので、あまり「虫」という字にこだわることもないと思うが……
その私自身、自分のなかの三葉虫好きと虫嫌いとをどう折り合わせているのか、じつのところさっぱり分らずにいる。
Trilobites
2023/10/19 - 編集済み昆虫は触れないほど嫌いという訳では無いですが、子供の頃から比べれば得意という訳ではないですね。特に幼虫系は、庭の広葉樹の駆除もビクビクしながらしてますからね。
三葉虫に「虫」を付けたのは、最大の失敗でもあると思っています。アンモナイトみたいにトリロバイトだったら、もう少しファンが増えていたのではとは思っています。もしエビやカニが〇〇虫という名が付いていたら、食べるなんて有り得ないと食卓に並んでなかったりしたかもしれません。
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ktr
2023/10/19本文でいいたかったことは、「虫」とついているからといって必ずしも「むし」ではないんだよ、ということですが、まったく何の啓蒙にもなってませんね。
海外では読み方はいろいろあっても trilobite で定着しているわけですが、日本と比べてはたしてファンは多いのかどうか……
レヴィセッティの奥さんがディクラヌルスの標本を見て卒倒したとかいうエピソードをみても、けっこう厳しいものがあるような気がしますね。
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trilobite.person (orm)
2023/10/21 - 編集済み日本人は虫に対して、愛憎どちらであれ、関心が強いように思いますね。私は昆虫も好きな少数派ですが、大多数の日本人は昆虫嫌いでしょうね。海外に目を移してみると(海外も色々ですが)、昆虫が嫌いというよりも、そもそもはなから関心がない・目に入らないという人が多い印象です。まるで道端の石ころのように。
記事の中で列挙されているのは中国語とのことですが、日本語にも『虫』を指す言い回しが多いですね。きっと虫が生活の身近にいる事や、アニミズム的な要素が関連しているのかなと思いますが、関心が強いからこそ、好き嫌いが両極端に振れるのかなと。Trilobiteの訳に三葉『虫』と、あえて虫をチョイスしたのも、日本ならではだなとは思います。
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ktr
2023/10/21そうですね、虫に関心がつよいというのは、やっぱり自然の中で暮してきたからでしょうかね。
大人になって虫嫌いになる人が多いのは、成長の過程で自然的なものをふるい落としてきた結果かもしれません。
そういう意味では、虫好きの人というのは精神的に健全な気がします。
いまの日本にあふれている、虫嫌い、猫好きの人々の大合唱は、なんか精神の脆弱さの現れのようで、心細くなります。
三葉虫という訳語は中国人も採用していますが、かれらは個々の種類まで「〇〇虫」と訳していて、まさに虫づくしの観があります。
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tomonakaazu
2023/10/22 - 編集済み郵趣家のあいだでは、昆虫の切手は相当に大きな収集対象で、各国が次々に昆虫の切手を発行していますが、切手を集めて愛でるのと、実物の昆虫を好きかどうかは別かもしれないなぁ、、とこのログを拝読して思いました。
ちなみにわたしのアイコン画像は「切手の虫」を標榜し、日本の昆虫切手から一番好きなものを選んだのですが、それが「クサムシ」だったことを後で知って、あれれれ、と。絵として好きなのでそのまま使っていますが、実物が目の前に出てきて触れたいかどうかは??ですね(笑。
ちなみに、友人の中には毛虫が落ちてきたら気絶するかもしれないから、春から夏にかけては桜の木の下を歩かない、という程の人もいます。昆虫ではないけれど、クモはだめ〜!という人はもっと多いですよね。わたしはクモは友達だと思って助けますが。
化石は乾燥していて動かないから、ハードルは低いと思うけど、そうでもないのでしょうか。
ktr
2023/10/221986年の60円切手ですね。
アカスジキンカメムシと書いてありますね。
これはどうも失礼しました。
調べてみると、昆虫の切手というのもけっこうあるんですね。
たしかにデザイン性において優れているのは論を俟ちませんが、しかし現物はといえば……
節足動物の体制というのは、他の動物とはまったく違っているので、そこに美を見出すか、醜を見出すかによって、極端に好き嫌いが分れるもののようです。
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