角川書店 角川文庫 ペルシャ猫を抱く女

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昭和五十二年十一月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和21年(1946年)に雑誌「キング」に掲載された横溝正史の短編小説「ペルシャ猫を抱く女」。
早春の、まだ肌寒さをおぼえる黄昏時、若い画家の五井は土地の旧家・本位田家の墓が並んでいる場所で、かねてより思いを寄せている美しい娘・早苗がこの寺の若い僧侶・了仙に脅されているらしい様子を目撃する。その後、寺の住職・了然を訪ねた五井は、了仙が見つけたという古い、ボロボロになった洋画のカンパスを見せられる、それはペルシャ猫を抱いた二十前後の、夜会服の女を描いたものであったが、驚くべきことに女の顔はまるで生き写しのように早苗にそっくりだった...
昭和35年(1960年)に発表された長編「支那扇の女」の原型となった作品ですね。この「ペルシャ猫を抱く女」を基に、自らを“毒殺魔”の生まれ変わりと信じ込む女、旧家にまつわる過去の因縁話などの設定が引き継がれ、昭和27年(1952年)の「肖像画」、昭和32年(1957年)の短編版「支那扇の女」、そして、長編版「支那扇の女」となっていくのですが、やはり最終形の長編版に比べるとあっさりしている感が否めませんね。とはいえ、改稿が多い横溝作品の中でも、都合三度にも渡った本作からの改稿の流れは非常に興味深いところです。本書には表題作の他に「消すな蠟燭」「詰将棋」「双生児は踊る」「薔薇より薊へ」「百面相芸人」「泣虫小僧」「建築家の死」「生ける人形」の短編8録されています。いずれも昭和21年~昭和24年に執筆された作品ですが、個人的には“金田一もの”の傑作短編「暗闇の中の猫」の原型となった「双生児は踊る」が面白かったです。タップダンサーの双子探偵、夏彦・冬彦のキャラクターが良いですね。角川文庫には昭和52年(1977年)に収録されました。
画像は昭和52年(1977年)に角川書店より刊行された「角川文庫 ペルシャ猫を抱く女」です。「Portrait of Countess YAGI」の文字が入った貴婦人の肖像画。まさに劇中に登場する、“毒殺魔”八木伯爵夫人をモデルにして描かれたという絵画「ペルシャ猫を抱く女」をモチーフにした表紙画ですね。昭和50年(1975年)に角川文庫に収録された「支那扇の女」とほとんど同じ趣向の表紙画ですが...、「支那扇の女」に比べると雰囲気や迫力の点で見劣りするような気がします。

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