角川書店 角川文庫 鬼火

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昭和五十年八月十日 初版発行
発行所 株式会社角川書店

昭和10年(1935年)に雑誌「新青年」に掲載された横溝正史の短編小説「鬼火」。
幼少のころから憎しみ合い、呪い合って生きてきた、従兄弟同士の二人の画家の陰鬱な葛藤を描いた、戦前の横溝正史を代表する名作ですね。この「鬼火」を書いていた時期の横溝は重い結核を患い、信州の療養所で療養中でしたが、そんな背景がこの物語を一層鬼気迫るものにしていると思います。純探偵小説ではありませんが、のちの“金田一耕助シリーズ”にも繋がるものが作中に散見されるのも興味深いところです。
本書には表題作の他に「蔵の中」「かいやぐら物語」「貝殻館綺談」「蠟人」「面影双紙」、5編の短編が併録されています。角川文庫には昭和50年(1975年)に収録されました。
画像は昭和50年(1975年)に角川書店より刊行された「角川文庫 鬼火」です。仮面の下からグロテスクな素顔が覗いている男と、身体の上を爬虫類が這っている裸婦。「鬼火」のドロドロとした世界観を見事に具象化した傑作表紙画です。

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