角川書店 角川文庫 金田一耕助ファイル6 人面瘡 杉本一文氏サイン入り

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平成八年九月二十五日 初版発行
平成二十四年五月十五日 二十八版発行
発行所―株式会社角川書店

昭和24年(1949年)に雑誌「講談俱楽部」に掲載され、その後、昭和35年(1960年)に改稿された横溝正史の中編小説「人面瘡」。
鳥取県との境近くにある“薬師の湯”。金田一耕助は磯川警部の案内で骨休めでこの湯治場へやって来たが、ここでも事件に遭遇してしまう。宿の女中・松代が、私は妹を二度殺したという奇妙な内容の遺書をしたため、自殺を図ったのだ。それを裏付けるかのように、松代の妹・由紀子が水死体で発見された。事件の影で見え隠れする右頬に大きな火傷がある男、金田一も目撃した松代の夢遊病癖。そして、由紀子の呪いで松代の腋の下に現れたという世にも奇怪な“人面瘡”...、様々な謎が交錯する事件を金田一が解き明かしてゆく。
元々は“ノンシリーズもの”として書かれたものを、“金田一もの”に翻案した作品ですね。「本陣殺人事件」を始め、「獄門島」や「八つ墓村」、「悪魔の手毬唄」など幾多の名作長編の舞台となった“岡山もの”作品の一つでもあり、人面瘡や夢遊病を扱ったストーリーは短編ながらも前述した名作群に負けず劣らずおどろおどろしいものですが、人面瘡・夢遊病設定にキチンと決着をつけ、不遇なヒロインに救いを与えた結末は意外に爽やかな読後感があり、印象的でした。本書には表題作の他に「睡れる花嫁」「湖泥」「蜃気楼島の情熱」「蝙蝠と蛞蝓」の短編4編が併録されています。個人的には金田一耕助が住むアパートの部屋の隣人の視点で物語が進行する異色作「蝙蝠と蛞蝓」が面白かったです。昭和の“緑304シリーズ”を再編成した平成の“金田一耕助ファイルシリーズ”は“緑304シリーズ”の後継といえるシリーズでしたが、この「人面瘡」だけは“金田一耕助ファイルシリーズ”から外れてしまったタイトルの中から中・短編を選抜、再編集したものであり、かつて「横溝正史シリーズⅡ」でテレビドラマ化された「不死蝶」を差し置いてその併録作品に過ぎなかった「人面瘡」がタイトルに選ばれたのは正直驚きでした。
画像は平成24年(2012年)に角川書店より刊行された「角川文庫 金田一耕助ファイル6 人面瘡」です。虚ろな表情で夢中遊行する女、そして、裸の女の水死体と右頬に大きな火傷がある男。ヒロイン・松代、“稚児が淵”で水死体で発見された由紀子、そして右頬に大きな火傷がある田代啓吉、「人面瘡」の主要人物をストレートに描いた表紙画ですね。ある意味ミスリードともいえる、田代啓吉の表情が何とも絶妙です。この「角川文庫 金田一耕助ファイル6 人面瘡」、平成8年(1996年)に刊行されてからずっと画柄が小さくトリミングされたデザインの表紙でしたが、平成24年の「横溝正史生誕百十周年記念」で杉本一文氏の表紙画が期間限定で復刻された際、表紙のデザインが一新され、フルサイズ掲載となりました。裏表紙には杉本一文氏のサインが入っています。これは平成24年6月2日に東京・神保町の東京堂書店で開催された「杉本一文原画展」で杉本氏のサイン会が行われ、その時に戴いたものです。
「横溝正史生誕百十周年記念」名作カバー復刻の帯付きです。

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