ダンブリ石 (danburite) 土呂久鉱山 #0678

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ダンブリ石はカルシウムとホウ素を含むケイ酸塩鉱物の一種です。米国コネチカット州ダンベリーで最初に発見され、無色透明~白色で四角柱状の結晶をつくり、縦方向の筋(条線)があるのが特徴です。日本では産地が少ない中、土呂久鉱山は美しいダンブリ石標本を産したことで有名です。ダンブリ石は屈折率が比較的高く(1.63~1.64)、美しく輝く性質を持っていることから過去には透明なものがダイヤモンドの代用品としてカットされた時期もあったといわれています。ダンブリ石は日本地質学会により宮崎県の鉱物に指定されています。

土呂久鉱山は古祖母(ふるそぼ)山麓(ふもと)に所在した砒素・錫・鉛・亜鉛鉱山です。はじめは1500年代に銀山として開発されたといい、その際ポルトガル人ヨゼフ・トロフを技師として招いたため、その名が地名になったという伝承があります。土呂久鉱山の鉱床は二畳紀石灰岩層およびそれを切る新第三紀花崗斑岩岩脈の接触部にある接触鉱床です。江戸時代には銀山として断続的に稼行されましたが、1920年(大正9年)以降は硫砒鉄鉱が主要採掘対象となり、これを亜砒酸窯で焙焼し、煙道に付着した亜砒酸を採取しました。土呂久鉱山における劣悪な労働条件と亜砒焼きにより生じる重金属の粉塵、亜硫酸ガスの飛散、排出される坑内水による付近の川の汚染により従業員および周辺住民に健康被害が広がり、1962年(昭和37年)以降は休山となりましたが、死者26名、公害認定患者139名余の大きな損害が生じました。土呂久鉱山は1973年(昭和48年)に廃山となりましたが、1975年(昭和50年)に損害賠償を求める裁判(土呂久砒素公害裁判)が起こされ、1990年(平成2年)に和解するまで、15年間にわたり争われました。

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