長野県南佐久郡川上村川端下(かわはけ) 松茸水晶

0

川端下は大きな水晶、松茸水晶、日本式双晶など、様々な形態の水晶が採れることで有名な産地。取れるものはほぼガサついた、質が悪いと言われてしまう水晶たちではありますが、手のひら大の日本式双晶というロマンが採れることもあり多くの採取家たちが通った場所です。

1930年代以降、山梨の水晶加工にこちらの水晶が使われようとしたらしく、その加工材として、90年近く経った今、当時の生業を知る者から「黒平」の水晶として譲られたというこちらが販売されていました。これを加工するというのも微妙な気もします。手持ちの水晶印材たちを観察しても、ガサつきの原因である雲母や角閃石の内包は見られません。何らかの理由で甲府に送られはしたものの、使われなかったようです。

加工と言っても、印材ばかりではありません。戦時中の水晶振動子に使われる可能性もあったでしょう。それにしても、当時の水晶振動子は山梨県内で十分に賄われていたことからするに、本当に何の加工のため「黒平」の水晶で扱われていたのかが不明です。

先細った先に付いた松茸。濁った水晶で表面も雲母の影響でガサガサ。サイズは小指ほどですので、加工には適さないものでしょう。と、ここまでマイナスイメージばかりでこの水晶を語っていますが、松茸水晶の大きさで言えば恐らく国産水晶では随一の川端下産水晶。その様子を知るには丁度良いサイズの標本です。

Default