髪結いの亭主 / Le Mari de la coiffeuse

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【ボロブドールをご存じか、中国王女よ】
ちょうどこの映画の公開時に住んでたアパートの近所に空き家の散髪屋があった。
用もなくその空き家を覗いてはそこに引っ越したらどんな生活が始まるのかと夢想したんです。
昭和の散髪屋だから店内はタイル細工で覆われていて、肌が触れると冷っとするだろうなとか、とかとか。そしてシャボンのかほりや蒸し器の蒸気のかほりなどがなぜか頭の中に漂っていた。

小学校を卒業するまで同じ散髪屋に行ってた。
なんでそこだったのかは覚えていないが、二三年頃からはお金を渡されてひとりで通うようになった。髪の分け方が歌手の菅原洋一のようだったので、その店主の雰囲気からハンバーグ散髪屋と勝手に店名を決めていた。(ハンバーグは菅原洋一のあだ名である)助手を務めるのは奥さんで無口な小柄な可愛らいい方だった。そしていつの間にやらその奥さんは顔を見せなくなってしまった。
 ある日突然、なにやら大柄でよく喋る女の人がお店にいた。このひとは誰なんだろうと思いつつも通っていた。後々に知ったことだが小柄な奥さんと離婚をしてその大柄な人と再婚をしたのだそうだ。あれから45年ほど経ってお店のあった場所に行ったが空き地のままで何もなかった。

『髪結の亭主』ってもちろん映画のタイトル(原題も同じ意)なんだけれど、『例え』であるなんて思ってもみなかった。世界中共通だし、女も男もどこの国でも一緒なのね。
音楽のマイケル・ナイマンを意識しだしたのもこの映画からで、翌年あたりにグローブ座でのコンサートへも足を運んだが前の席の筑紫哲也氏の頭がけっこう邪魔だった。

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